2023年9月26日火曜日

No.136_肉、魚の炭火焼きのはなし


今回のテーマは、コーヒーの話ではなくて、肉や魚を直火で焼く話なのですが...炭火で焼いた肉や魚は(そしてウナギも^ ^)、ガス火や電熱で焼いたものでは味わえない美味しさがありますね。この違いは何故発生するのか?予てより興味がありました...

すると...つぶやきNo.134でも引用させて頂いた河野友美(1929-1999)さんの著書『美味しさの科学、味を良くする科学』に炭火焼き、とりわけ備長炭の優れているところについての記述を見つけ、なるほど!と合点が行ったものですから、ここで少し紹介させて頂きます。

『直火焼きの第一のポイントは【①強火の遠火】。食材(肉、魚)をこんがり美味しく焼くには食材の表面温度を180℃辺りに保つことが重要。炭火の表面温度は800℃以上にもなるが、数十センチ離れて180℃近辺のエリアは食材全体がこの180℃で包み込まれるように焼かれていく。これが炭火より弱い熱源のガス火で焼くときは、食材をこの熱源に近付けて焼くことになるが、食材全体を180℃に保つことは難しく、こんがりとは焼き上がらない。

例えば気温の低い冬であっても太陽の照っている晴天の時に布団を干すと、布団が暖かく、ふっくらとする。これは太陽が強力なエネルギーを持っていて、その放射熱のエネルギーが布団に与えられるからだ。突飛な例のように感じられるかもしれないが、直火焼きの調理も理屈はこれと同じで、強力なエネルギーを持つ熱源を使い、その放射熱で焼くとこんがり美味しく焼ける。

第二のポイントは【②炎と煙は禁物】。【①強火の遠火】は焼いている炎や煙が食材に当たりにくいと言う利点もある。炎は1000℃にもなるので、近火で焼くと食材の中まで火が通らないうちに、表面のタンパク質や脂肪が変質、炭化してしまう。更に近火で焼いている時、肉汁が熱源に滴り落ちたりすると煙や不快な匂いが発生するが、これが食材に吸着してしまう。これが【①強火の遠火】だと防げる。』

つぶやきNo.131で『焙煎のヤキは焼いているわけではなくて...』をテーマにしましたが、一方で上記①、②の観点は、焙煎論にも応用出来る考え方を含んでいると感じました。

焙煎中、窯内温度は上がり続けるので、前述の『食材表面を180℃に保つように焼く』とは異なるのですが、180℃前後で化学変化が起きて豆の成分が大きく変化するのでこの辺りのエネルギーの与え方にはとても気を使います。また、上記②に【炎と煙は禁物】とありますが、これは共通します。いろどりこーひーで使用しているPRPBAT社製の焙煎機は主に熱風でヤイテ行くので、直火が豆に触れることはなく、更には強力な排気も相まって豆が煙に包まれることもありません。

焼きの世界は違えど、いろいろ参考になることがあるものです^ ^!

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2023年9月19日火曜日

No.135_オータムスカイ、ハロウィンブレンドのご紹介


今回の写真は富士山と山中湖とススキです。先週の店休日を利用して行って来ました。逆光の中、ススキが黄金に輝きながら揺らいでいました。今年の夏は猛暑を超えた酷暑でしたが、9月に入り秋はもうすぐそこまで来ているようです。

と言うわけで(いきなりの展開ですがw)、季節のブレンド秋Ver.としてオータムスカイとハロウィンブレンドをご紹介させて頂きます。

先ずは“オータムスカイ”です。

『筋雲を抱いた秋の澄んだ青空のイメージ。ほんのりソフトなベリー感』がテーマです。

ここで少し脱線してしまいますが...『ほんのりソフトなベリー感』は、ワインで例えるとミディアムボディの赤ワインをイメージしています(ワインをお飲みにならない方、突飛な表現でゴメンナサイ)。ワインは食材に応じて飲み分けるものですが、季節感としても夏は冷えた白ワイン、冬は赤のフルボディ、そして秋は赤のミディアムボディ...そんなところへイメージを膨らませてみました。そのイメージをいろどりこーひーの二つのモカ(モカ・ハマとゲデブ・ナチュラル)がとってもエレガントに表現してくれました。

続いて“ハロウィンブレンド”です。

『酸味、苦味をグッと抑えた、飲み易いブレンド。柔らかな口当たりと優しい風味。心地よく長く続くソフトな余韻』が特徴のブレンドです。

酷暑を乗り越えたこれからの過ごしやすい季節こそ、柔らかなこの風味はいろいろな場面でとってもマッチすると思います!(^^)

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2023年9月12日火曜日

No.134_コーヒーは苦いですか?


「コーヒーが苦手」と仰る方から伺う、コーヒーのネガティブな風味表現に“苦い”というのがあります。皆さんはコーヒーを飲んで苦いと感じたことはありますか?

一方で時々お客さまから「私、苦いのが好きなんですが、この中で一番苦いのはどれですか?」と真逆のことを聞かれることもあります。

苦いコーヒーをご希望されると正直、お応えに苦慮してしまうのですが(^^;; 、この“苦い”と言う味表現、なかなか奥が深いというか、手強い感じがします...

つぶやきNo.117で世の中の食べ物は4つの基本味“甘味、塩味、酸味、苦味”で構成されていると言ったお話に触れました。その中でも今回は苦味についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

かなり古い本ですが、河野友美(1929-1999)さんが1980年に著した『日本人の味覚』という本の中に以下のような文書がありました。

『苦味は、舌の部分で言えばやや奥の方で感じる。その奥の部分でも前に近い方と奥の方とでは苦味の感じ方が違う。美味しく感じる苦味は、どちらかというと前の方で感じる苦味である。薬などあまり良ろしくない感じの苦味は舌のより奥の方で感じる苦味である。ただ、食品に良い感じを与えるカラメルといった苦味でも、そのカラメルの出来具合によってかなり良い苦味と良くない苦味に分かれる。カラメルは糖分が180℃位に加熱された時に出来てくるが、出来始めのカラメルは美味しいのに、糖分の変化が進み過ぎて、色が非常に濃くなり過ぎるとその苦味は不味く感じる。また、糖分は適度な高温にさらされるとカラメルの他、タンパク質の変化と相まってメラノイジンといった香り成分も形成されていく。』

この中に『糖分のカラメル化が180℃くらいで始まり...』 とありますが、日々焙煎をしていて僕もこれには思い当たる節があります。と言うのも焙煎進行の中でもこの前後はとても大きなエネルギーを必要とするからです。具体的には火力を3倍程に強めます。これにより化学変化が促進され、焙煎中も明らかに香りの変化を感じます。そしてこの化学変化が済んだら再び火力を1/3に戻します。

また、上記に『糖分の変化が進み過ぎると不味い苦味が出来上がる。』 ともあります。どうやら「コーヒーは苦くて苦手」と仰る方は、この不味い苦味を体験された可能性が高そうです。苦いコーヒーを飲んだ後、舌の上の奥の方にニガニガした嫌な感じが残り続けるのは焦げ感のある豆は論外ですが、このような状態になっただけでも不味さとして感じてしまうようです。

つぶやきNo.122で深煎りなのに苦くない...をテーマにしましたが、上記解説の通り『イイあんばいの焙煎』をすると、苦味とは違う魅力的な美味しさが出来上がるということです。

豆を美味しくするのも、苦くしてしまうのも焙煎次第というところがあるんですね...そういう意味では焙煎人の責任は重大です。

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2023年9月5日火曜日

No.133_感と勘の世界


焙煎は一種、職人の世界です。僕が “職人”、そして“職人道”に描いているイメージは、過去のつぶやきNo.99でも少し触れましたが、今回は少し違った切り口で捉えた『感と勘の世界』をテーマにしてみたいと思います。

改善を目指す思考、行動のサイクルに古くから『P(Plan) → D(Do) → C(Check) → A(Action)を回す』なんて言葉がありますが、その思考にもやや近いかもしれません。

P=Planは直訳すると“計画”と言うことかもしれませんが、焙煎の行動の中では“仮説を立てて”と捉えた方が良いかもしれません。そして仮説力を上げるにはやはり経験値が必要で、その向上に近道はなく、【感】と【勘】を働かせた作業の積み重ねの先にあるものだと思っています。

焙煎は毎回同じことを繰り返している様でもその日の環境(季節、温湿度)や豆種の違いにより進行に微妙なズレが生じます。正確に言うと“ズレ”と言う状態になる前にその兆しを【感】を研ぎ澄まして捉え、即座に【勘】を働かせて対処して行くので、『ズレの兆しは見えてもズレは発生させない。』と言うことなのですが...

「勘で作業」というと何か「直感を働かせて一か八か」のような語感もありますが、むしろ前述の通りとっても慎重な作業なんです。イメージとしては大きな船の進路を0.5°ずらして、その挙動を確認しながら目標に向かって微調整する...そんな世界かな?と。とは言え今や、船も車も飛行機も“自動運転”の時代ですね。(^^;;

焙煎でさえ、お客様の目の前でお客様が指定した生豆を焙煎する自動焙煎機も登場しています。たぶん焙煎に関しても「AIを組み込んだ」なんて機械も早晩登場するのでしょうが、僕はこれには一線を画する思いを持っています。これについてはまた別の機会にテーマにしてみますね。^ ^

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