2022年7月26日火曜日

No.75_焙煎中の温度調節は機関車を操縦するようなもの...?


今回の写真は、国鉄時代の記念切符です。北海道の岩見沢駅で発行され、当時僕自身が駅に行って購入したものです。(岩見沢市は僕が幼稚園から高校まで過ごした故郷です)。切符の日付を見ると昭和50年(1975年)とありますから、今から47年も前なんですね...とんでもなく昔です😱。僕の子供時代は普通に蒸気機関車が走っていましたが、この日がSL(懐かしい響きです💕)最後の日だったんですね。今回のテーマを『焙煎中の温度調節は機関車を操縦するようなもの...?』としたものですから、ふとこれを思い出して、押し入れの段ボール箱から引っ張り出してきた次第です。

と言うわけで長い前置きになりましたが、今回は焙煎中、温度調節(進行制御)している時の心持ちをご紹介させて頂こうかと思います。

焙煎機の中に生豆を投入すると一旦釜内温度は下がりますが、底を突いた後、煎り止めまで温度は上昇し続けます。その間、10℃ごとのインタバルタイムと通過タイムの両方をを計測、記録し、且つそれらを予め定めた目標タイムと比較しながら、誤差を6秒以内に制御して焙煎は進行します。

一方、焙煎過程で必要な(適正な)カロリーはその時々で異なるので、温度上昇は直線的ではなく、10℃毎にそれに合わせた火力調整を続けることになります。前述の両タイムが計画の±6秒を超えた時は、次のステップで火力を微調整してその回復に努めます。

焙煎はその日の天候(温湿度)や生豆種別の影響を受けるため、どうしてもブレと調整は付いて回りますが、その調整に当たる心持ちが、表題の『機関車を操縦するようなもの...』と言うことになります。ここまでお話ししてもサッパリ合点が行きませんね(笑)

要は、『急発進、急ブレーキ厳禁(効きません)』と言ったことなのですが...

さすがに機関車は運転、操縦したことは無いので、以下はイメージ、推察ですが...機関車は現代の電車とは違い、機動力(蒸気利用)があるのは先頭車両のみで、その後ろに何両もの車両が連結されています。それは、客車の時もありますが、更に重たい貨物車両の時もあります。それらを牽引しながら行う加速、減速は、急発進、急ブレーキとは行かず、ソフトな操作が必要なのではと思ったのです。

方や焙煎に話を戻すと...例えば前述の経過タイムが10秒遅れてしまったとします。すると次のステップでは火力を強めて回復を図るのですが、短時間でいきなり±0を目指して回復させると(進行を早めると)、その間、釜(釜は分厚い鋳物で覆われています)に蓄積されたカロリーが、次のステップの進行をも早めてしまい、今度は早すぎて、ブレーキを掛けなくてはならない...そう!アクセル、ブレーキ、アクセル、ブレーキみたいな運転になってしまいます。こんな焙煎進行では再現性を以て、美味しい豆を焙くことは決して出来ません。

機関車の場合、後ろに連結されている重たい車両が慣性として作用するので、やはり急発進、急ブレーキは効かず、速度変化させる時もその慣性をしっかり意識しながら、滑らかでソフトな制御が必要なのではと思うのです。焙煎機の温度調整、進行制御も機関車の運転同様に蓄熱カロリーを慣性と捉えながら、滑らかな運転、安定した制御がとても大切なポイントになります。

なんだか今日はノスタルジックと焙煎職人談義が交錯するつぶやきになってしまいました...(苦笑)

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2022年7月19日火曜日

No.74_ブレンドコーヒーの楽しみ


今回はブレンドのお話です。いろどりこーひーで販売しているコーヒー豆は大別するとシングル(オリジン)とブレンドがあります。

シングルは、『単一品種』と言った意味合いで『グァテマラ』、『タンザニア』、『コロンビア』と言った類です。こうして産地名(国名)で表記、呼ぶことが多いですが、一方で同じ国の中にも違う品種もありますし、ましてやロケーション(農園、標高、土壌、生育斜面の方位等)、生育方法、収穫方法、精製方法等も多種多様ですので、それぞれ緩やか〜な風味傾向はあるものの、世の中全てのコーヒーをこの名前だけで特徴を表現、比較することは実は難しいと思います。そう言う意味でシングルは、『いろどりこーひーのグァテマラ』の様な、『○○で手に入る△△というシングル』の様な捉え方で、お好みを探して頂けるとよろしいいかと思います。

方やブレンドですが、これは前述のシングルを配合して(混ぜ合わせることで)作ります。

因みに混ぜるのは、焙煎前ではなく、焙煎してからです。これは生豆はそれぞれ産地に応じて微妙にサイズや硬さ、水分量が違うため、焙煎プロセスも異なるからです。先ずはそれぞれ適正に焙煎することから始める訳です。その出来上がった焙煎豆を“定めた重量比率”で混ぜ合わせるのですが、この“定めた重量比率”を検討する段階が正に『ブレンド作り』と言うことになります。

ブレンド作りはカッピングで試行錯誤を重ね纏めていきます。僕にとってはこの『あーでもない、こーでもない(笑)』と考えながら進めていく過程はとても楽しい時間です。新たなブレンドを作るとき、それぞれに自分なりのテーマを決めて取り組むのですが、一方で一貫して考えていることもあります。それは『複雑さ』と『バランス』です。一見、相反すること、矛盾することのように感じるかもしれませんが...

『複雑さ』は、正にブレンドならではのお楽しみポイントです。シングルが持っている個性がブレンドされ、新たな風味を生み出します。それも口にした瞬間の印象、飲んだ味わい、余韻の印象、冷めていく過程で入れ替わり登場する印象それぞれに、シングルだけでは味わえないハッとする印象(複雑さ)を作り上げて行くことが可能です。

『バランス』も大切です。例えばマンデリンの風味を生かしたブレンドを作ろうと思ったとして、マンデリンの比率を高くすれば良いかというと決してそうではありません。僕は大体3〜4種類の豆を配合することが多いですが、その際、バランスに気を付けます。ポイントは、心地良さと、次の一杯がまた飲みたくなる余韻を引き出すバランスです。

いろどりこーひーでは、定番ブレンドのほか、季節ごとに入れ替わる“季節のブレンド”をご用意しております。

是非、ブレンドの複雑さ、バランスから来る心地良さ、余韻、そしてシングルとの違いもお楽しみください。

 

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2022年7月12日火曜日

No.73_木梨憲武さんの絵とコーヒー


お店に木梨憲武さんの絵(ポスターですが)を掲げました。(本日の写真に写っている絵です。)

先月、上野の森美術館で開催されていた“木梨憲武展”を観てきたのですが、その中でも特に気に入った『感謝』と名付けられた絵のポスターを購入してきました。2015年の長崎、2020年の福岡で開催された時も観てきたのですが、木梨さんの着想、発想、表現力には目を見張るものがあります。いくつかのシリーズものがあるのですが、それぞれが独創的で何よりもハートフル!ピースフル! 優しさ、愛に満ち溢れているところがなんとも魅力的です。展覧会場でも『かわいい〜』と言う歓声やつぶやきが溢れていました。

こうして絵、作品を通じて、観る人、接する人をワクワク、明るく、ハッピーに出来るって言うのは、本当にすごいなぁ、いいなぁ、羨ましいなぁって思います。これは木梨さんがエンタメ活動、もしくは人生一貫して、人を楽しませよう、明るくしようといったサービス精神、心根が滲み出ている結果なのかもしれません。そしてたとえポスターでも、グッツでも、購入した人がそれを家で眺めて、又は身に付けてほんわかする...なんとも素敵です。

そう言う意味では人それぞれ『それ的なもの』をお持ちかもしれません。趣味の世界がそうかもしれませんし、好きな歌手やお気に入りの曲なんかも同じような価値を持ち、それが毎日の生活に心地よく寄り添っている。“大切なもの”と言う意味では、僕が木梨憲武さんの作品に感じた思いと共通点があるかもしれません。

出来ることならいろどりこーひーのコーヒーも皆さまのそんな存在の一つに加えて頂けたら、最高に嬉しいなって思います。店で木梨憲武さんの絵(ポスター)を眺めながら、そんなことを結び付けて、ふとワクワクしてしまいました。(笑)

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2022年7月5日火曜日

No.72_焙煎直後の豆のチェック


以前このコーナーで焙煎後の豆チェックの目的でカッピングを行なっていることを記載しました(No.57_コーヒーのカッピング)。 そのカッピングは、いわゆる『風味チェック』が目的ですが、実はその前に本日ご紹介する目視確認も行なっています。(これを『ハンドピック』と呼んだりもします。)

動作としては焙煎直後の豆を収納ケースから(写真にもある)取手付きカップですくい、左手に持った盆に広げ、気になる豆は取り除いて、他は別のチェック済みケースに空けると言ったことを豆全数に対して行います。

これを行う(僕の)目的ですが、『お客さまにご提供するコーヒー豆という食品をこの目で全数確認する』と言うことが一番です。

(話は一旦横道にそれますが...)コーヒーの焙煎は焙煎機で行いますが、(焙煎機の構造はイメージとして全自動ドラム式洗濯機を思い描いて頂けると近いものがあるのですが)、焙煎機内の釜(ドラム)は円筒を寝かせた状態の空間になっていて、その内側にはいくつかのフィン(羽根状の薄板)が取り付いています。そしてそのドラムは中心軸周りに回転を続けます。そこに生豆を投入すると、豆は内側のフィンではね上げられ、宙をバラバラ舞いながら、焙煎が進行します。そして煎り止め温度に達したところで、豆はドラムから外に出され、冷やされる...これが焙煎の大まかな流れです。

僕の使用している焙煎機は、ドイツのProbat社製で、熱風と釜を覆う分厚い鉄板の輻射熱でじんわり焙(や)いていくので、焙きムラが非常に少ないことが優れています。一方、豆の大きさに微妙な差があったり、焙煎中の爆ぜ(ハゼ)で欠けた豆等に煎りムラが発生することがほんの少しあります。それはほんの少し焙き色が薄かったり、濃かったりの表情として現れるのですが、そのような豆は前述の目視確認で取り除くようにしています。とっても微量ですが、少なからずやの風味への影響を避ける目的です。

この取り除く作業を指して『ハンドピック』と呼んだりするのですが、お店や人によっては、これを焙煎前の豆に対しても行うところがあるようです。コーヒーに関する本や、ネットで検索してみるとこの目的は事前に欠点豆を取り除くこととか...そこには欠点豆種として、未熟豆(完熟する前の実の状態で収穫された豆)、虫食い豆、黒い豆(豆の精製過程や保管状態の不備からくるもの)等記載されていますが、いろどりこーひーで購入している生豆はそれらが無いグレードのもの(収穫、精製、輸送、保管がしっかりコントロールされているもの)を使用していますので、事前のチェックは必要としません。

とは言え、食品を扱う店として、販売する豆に関しては、僕自身の視覚、味覚でチェックして、細心の注意を払った物をご提供したいと考えております。

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