2023年7月25日火曜日

No.127_フレンチシェフに共感する素材選びの大切さ(①/②)


今回のテーマは“素材選びの大切さ”です。コーヒーにおける素材は、焙煎前の生豆ということになりますが、良質な生豆を使わないことには、良質な(美味しい、魅力的な)コーヒー豆は作れませんので、僕(焙煎をする者)にとっては、とても大切なテーマです。

この素材というものは、料理の世界で言えば食材ということになると思いますし、宮大工の世界では木材、陶芸家の世界では土という様にそれぞれの世界にそれぞれの『素材と向き合う』ということが存在するのではと思っています。そしてそれぞれの世界の人たちが素材をどう捉えて取り組んでいるのかとても興味があります。

そんな興味から関連する書籍を読んだり、ネット、YouTube、テレビ番組なんかも見ているのですが、とりわけフレンチシェフの世界には『なるほど〜』、『そうなのか〜』と焙煎の世界からも大いに共感できる事柄や多くの“気付き”を頂きます。

以下、フレンチシェフが何人か登場しますが、導入部は三國清三さんになります。

三國さんの著書の中に『料理を作ることは、素材を尊重し、その産地や生産者にも敬意を払いながら、素材本来の持ち味を引き出してあげること』とありました。その思いに至るまでには三國さんが1980年27歳の頃、フランスでアラン・シャペルさんのお店で修行していた際のシャペルさんの行動、お話から大きく影響を受けたとのことでした。

アラン・シャペルさん(1937-1990)は、『料理界のダ・ヴィンチ』と称される方です。そんなシャペルさんは、毎朝6時から自身でジープを運転し、地元の市場や農家、食肉生産者を回り、素材を仕入れた後、10時半頃店に戻り、揃った素材に応じて当日のメニューが決められて行ったそうです。近隣生産者を大切にし、常に感謝と敬意を持って付き合うことにより、生産者の方々も最高の素材を先ずはシャペルさんへと提供してくれたそうです。

因みにホテルオークラ初代総料理長小野正吉さんもその著書の中で『料理は材料4:道具2:技術4の割合で成り立っていると思います。良い材料を選ぶこと、孫の代まで使えるような良い道具を使うこと、料理の技術を磨くとともに料理に対する愛情とセンスを養うこと、このどれが欠けても、料理の上達は望めません』とおっしゃっています。

そして三國さんはシャペルさんから、こんな言葉も頂いたそうです。

料理は節度ある行為でなくてはなりません。繊細な感性と慎み深い態度で望むのです。全てを決めるのは食材自身で、料理人は自然の恵みを学び続けるアプランティ(弟子)なのですから』と。うーん、実に奥深い、示唆に富んだお話です。焙煎に於いても焙煎人が「こんな風味にしてやろう」なんて勝手な思いで、焙煎度やその進行を決めて行くものではありません。あくまでも豆種毎に最高の美味しさが引き出される進行を求め、出来上がった豆と対話(風味確認)する日々の積み重ねです。

この辺で紙面が一杯になってきました。次回は素材を選ぶということの本質、そしてそれを焙煎に照らし合わせると...をテーマにしてみたいと思います。

 

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2023年7月17日月曜日

No.126_アンリ・マティス


先日、マティス展(@東京都美術館)を観て来ました。

アンリ・マティス回顧展の形ですので、時代を追ってマティスの作風の変遷が見て取れて、とても興味深かったです。また絵画の他、素描、彫刻、版画、切り絵等も展示されていてマティスの多彩さ、そして多才さに改めて感動しました。

美術展は結構頻繁に行きます。通っていて思うのですが、“本物”を目の当たりに触れることが僕は好きなようです。何10年、100年、200年前に書かれた本物の絵(作品)を今、この目で見ている。そんなことに凄く心動かされます。その絵を見て解説は出来ませんが、やはり何か感じるものがある。それがとってもイイです。

僕が美術館通いを始めたのは、30歳を過ぎた辺りからですが、これは本当にひょんなきっかけからでした。

因みに僕はこの店を始めるまでは設計監理の仕事をしておりましたが、当時、建築主の方(病院の女性理事長)が大の芸術好きでヨーロッパの旅行話や、絵画、オペラに至るまで話題はとても多岐に渡り、とても高尚(苦笑)でしたが、正直どの話題にも自分は付いて行けませんでした。(同席した上司、同僚が的確に応対しておりました...)

そこで『これじゃいかん!』と思い立ち、先ずはお手軽に始められる美術館通いが始まったわけです。以来、色々な美術展に行っては、次に理事長に会った時『○○美術展に行って来ました。○○が○○でした!』なんて、感じたことを伝えていたら、その何倍も蘊蓄が返ってきて、これまた思考停止になって、また違う美術展に行くという繰り返しでした。すると不思議なもので自分なりに好きなジャンル、好きな芸術家が固まって行くものです。興味を抱き始めたら今度はその世界にのめり込んで行った...そして今に至る。そんな感じです。

因みに僕の別の趣味に寄席通い、落語を観るというのもありますが、これも数十年前にご一緒した別の建築主とのやりとりがきっかけです。

話を絵画の話に戻しますが、僕の一番のお気に入りはクロード・モネです。あのなんとも言えない淡い陽に包まれた柔らかな、優しい情景は、どれもこれもホントうっとりしてしまいます。『うわぁー、いいなぁー...』モネの絵を見ると、どれもそんなことを呟きながら見入ってしまいます。

そうそう、前述の理事長と何年も経てから再会する機会があったのですが、いろいろお話しして行く中で『青は藍より出て藍より青しね』って言われた時は、それが冗談、からかっていると分かっていても嬉しかったのを思い出しました。(^^;;

店に掲げている絵(ポスターですが)も、マティスのJAZZシリーズに切り替わりました。^ ^

 

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2023年7月11日火曜日

No.125_夏ブレンド“夕涼み”のご紹介


夏ブレンド“夕涼み”をご紹介させて頂きます。

“夕涼み”のコンセプトは、『サラッと飲みやすい口当たり。爽やかで明るい香り』です。日中の暑さも和らぐ夕暮れ時、ほっと一息“夕涼み”。そんな情景をイメージしたブレンドです。

いろどりこーひーでは約8割の商品は通年販売し、約2割の商品は“季節のブレンド”という形で1〜2ヶ月毎に入れ替えています。(他に数種類のシングルコーヒーも期間限定でご紹介することがあります。)

“季節のブレンド”と言うくらいですから、その季節の気候のほか、出回る食材(フードペアリング)、出来事(NEW YEAR、ハロウィン、クリスマス)などを念頭にコンセプトを定め、そのイメージに近い風味が感じられるようブレンドして行きます。

例えば秋だと実りの秋をイメージして、栗やさつまいもを使った和菓子に合うコーヒーをとか、クリスマスだったらケーキの生クリーム、チョコレートの乳脂肪分ともバランスして次の一口が美味しく進むコーヒーをと言った具合です。

和菓子屋さんでもケーキ屋さんでもそしてフレンチレストランでも季節毎にランナップ、メニューが移り変わりますが、それらは旬の食材を使用するためと言う側面と、季節に応じて人が要求(欲求)する風味、嗜好も緩やかに移り変わることに応える側面もあると思います。

そしてそれはコーヒーの風味への要求(欲求)も同様です。(一方でお気に入りのコーヒーを通年飲まれる方も多いので、商品の8割方は通年販売しています。)

そして季節は夏。夏は、自ずと体も暑さを凌ぎたい、納涼を欲しますので、食べ物の嗜好も熱いラーメンよりは冷やし中華、冷や麦、ざる蕎麦等の冷たいもの、そしてあっさりしたものへと向かいがちですし、飲み物ももしかしたらホットコーヒーよりはアイスコーヒー、麦茶、炭酸等冷たい物へ傾くのかもしれません。

そんな中ホットコーヒーでも『サラッと飲みやすい口当たり。爽やかで明るい香り』で、むしろ夏を感じ、夏を楽しむ、そんなブレンドになってくれるといいなとの思いで色々なコーヒー豆の組み合わせ、そして色々な比率の試行を経て、出来上がりました。ワインで例えるなら赤ワインよりは、白ワインのイメージです。

その風味を支えているのが、モカ・ハマです。その上品さ、エレガントさが優しく漂う爽やかで明るい飲み口に仕上がりました。因みにブレンド作りの過程で、アイスでも試してみましたが、アイスティーを思わせる風味が心地良いです。(モカ・ハマ自体がアールグレイを思わせる風味を持っています。)

これからの暑い夏、ホッとでもアイスでも両方楽しめる“夕涼み”。是非、お試し下さい。

なお、この夕涼みと一緒にシングルコーヒーでは“深煎りニカラグア”も発売致します。こちらは、『淡いフルーツ感とコクのマリアージュ』が持ち味です。夕涼みとはまた異なる風味ですので、その日の時間帯や気分で飲み分けて頂くのも楽しいと思います。

 

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2023年7月4日火曜日

No.124_破壊と創造・再生


藤原竜也さん主演の舞台『ハリーポッターと呪いの子』(@赤坂ACTシアター)を観てきました。昨年7月の日本初演以来、5月にはその延べ観客数が50万人を突破し、今年度末までのロングランも決定しました。昨年NHK“プロフェッショナル仕事の流儀”に出演した藤原さんを観た後、このつぶやきNo.94でも藤原さんに関わるお話を書かせて頂きました。公演を知ったその時点で藤原さんの出演は終了していて、とても残念に思っていたのですが、今年2月に6〜9月公演で藤原さんが再演されると発表され、チケット発売初日に購入し、待ちに待ったその日がようやくやってきました。

ハリーポッターだけあって、演目の随所に魔法の演出があり、目が離せない前後半100分×100分の舞台でした。とりわけ藤原さんの演技は本当に素晴らしく、その世界に引き込まれて行きました。これが藤原さんがプロフェッショナル仕事の流儀の中でおっしゃっていた『積み上げて来たものは一回ゼロにして再度、新しい演技を創って行く【破壊と創造】だ』の世界なのか!と、決して演劇通ではない僕からもそれが感じ取れました。終演後のキャスト挨拶では観客全員がスタンディングオベーションを贈り、館内一体の感動と共に満足、満足な時間を過ごさせて頂きました。

話が変わりますが...

先日テレビで福山雅治さん主演のドラマLAST MANの放映に続いて、初耳学にも福山さんがゲスト出演されていたので、続けて観ていたところ、福山さんの口からも【破壊と再生】と言う言葉が飛び出し、こりゃ藤原さんの言ってた【破壊と創造】と同じ意味合いだ!とびっくりしました。

福山さんのお話の文脈としては、『ツアーにはいつも新鮮な感動を持って回りたい。それは【破壊と再生】というか、壊して作り直して、そして前より良くなったねって思われたいんです...表現者としては。正直、自分で自分の作風や芸風を一旦壊し、そして新たに打ち出すと言うのはとっても難しい。それを止めて今のまま続けていってもそこそこ食べていけるけど、自分が飽きちゃう。そしてファンからも飽きられちゃう。』そんなお話でした。まさに前述の藤原さんと同じ境地だと思いました。

更に話は変わります...またまたTV番組の話ですが(笑)、

先日NHKで『阿蘇 彩の大草原 炎で始まる四季』と言う番組を観ました。阿蘇では早春枯れた草原を野焼きで一旦焼き尽くすことが太古の昔より行われているそうです。そしてその数週間後には新たな芽吹きが始まり、あっという間に青々とした草が生い茂る大海原へ一変すると。野焼きの効果も色々説明がありましたが、その根底にある考えは【破壊と再生】との話がありました。これまた【破壊と再生】です。

この3つのエピソードを通して、【破壊と創造・再生】という考え方がすっかり僕のお気に入りになりました。焙煎(の味作り)も一緒だと思っています。これでいいという終わりのない世界は、破壊と創造・再生の繰り返し、継続しか無いと思うからです。 

ん?今、ふと思いましたが...3年前会社勤めを早期退職し、この道へ進んだ僕もひょっとして破壊と...(^^;; ??

 

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