2025年3月25日火曜日

No.214_生豆精製における発酵段階


前回のつぶやきNo.213では、生豆が出来上がるまでの3種類の精製方法について、概略ではありますが、ご紹介させて頂きました

今回はその中でも②ウォッシュドの発酵段階をもう少し掘り下げてみたいと思います

かく言う私もコーヒー豆産地には行ったことがないものですから、以下の内容はそれに詳しい方から教えて頂いた内容、そしてそれに加えて書物等で調べた内容になります。この発酵過程がコーヒーの風味に与える影響と言うのがとても興味深いので、ここにご紹介させて頂きます

以下の内容、少々細か過ぎるきらいもあるので、先に要約をお伝えすると...

『コーヒーノキの果実を2〜3日水槽に漬けると、その間、微生物が果肉の糖分を栄養に、アルコール(揮発性化合物)や酸を生成し(これが発酵です)、その成分が種子(コーヒー生豆)にフルーティなアロマや滑らかな甘みをもたらします』

ここで今一度、ウォッシュドのお浚いですが...前回つぶやきNo.213で以下のように記載しました

『赤い実を皮剥き機(パルパー又はミューシレージリムーバー)でザッと剥いてから、水槽(発酵槽)に23日漬けた後、水の流れる側溝で揉むように果肉を綺麗に落として、殻の状態で約2〜3週間天日干し(殻付きのギンナンを乾燥させるようなイメージです)。因みにミューシレージとは果肉のヌルヌルした部分のことです。発酵槽での発酵を通して、果肉のフルーティさが種子(コーヒー生豆)に取り込まれます』

今回はその中の「発酵槽に2〜3日漬ける」フェーズのお話です

この間、発酵槽内の微生物の活動は時間経過に伴い、今回添付したグラフ(増殖曲線)の様な経路を辿ります

❶ラグフェーズ(Lag Phase、遅延期、遅滞期、誘導期、発酵準備段階)

 次の❷ログフェーズで分裂開始するための準備、誘導段階で、この段階では微生物(細菌)分裂はまだ起きていない。微生物がコーヒーの実の果肉に含まれる糖分を栄養として、酸を生成し始め、徐々にpHレベルを下げていく(酸性化していく)。この環境がコーヒーのフルーティさをもたらす上で重要な役割を果たす

❷ログフェーズ(Log Phase、対数増殖期、指数関数的成長期、風味強化)

 微生物が分裂を開始し、増殖を始める。最初は緩やかに増殖するが、次第に対数的に増殖が進む。並行して果肉部の化学変化が大幅に促進され、揮発性化合物(エステル類、アルデヒド類等)や酸類等、香り成分が生成されてくる。この段階をゆっくり長く持続させることが、コーヒーの風味特性を際立たせるために重要。そのため生産者は温度、pH値を管理して、このフェーズの状態と時間をコントロールする(温度を上げると進行が早まり、pH値が下がる。温度を下げると進行が緩まり、pH値が上がる)

❸定常フェーズ(Stationary Phase、固定相、静止期、バランス調整)

このフェーズでは、微生物の活動も安定(分裂率と死滅率が均衡)し、酸味と甘味のバランスを取る微妙な調整が行われる

酸味の観点ではクエン酸やキナ酸といった酸が生成され、これがコーヒーに明るさやシャープな風味をもたらす上で重要な役割を果たす

甘みの観点では糖が代謝され、これが甘みの質感を生み出し、マウスフィール(口あたり)の良いコーヒーに繋がる

この甘みと酸味のバランスが取れたとき、コーヒーは非常に複雑でありながらも一貫性を持つ味わいを持つようになる

❹デスフェーズ(Death Phase、死滅期、風味保持)

このフェーズでは、微生物の活動が低下し、発酵が徐々に終息していく。更に進行するとオフフレーバー(香りが抜ける)や更には腐敗やカビの発生にも繋がるので、この段階の終了の見極めはとても重要

と言うわけで、発酵槽に漬けると言うのは、果肉をふやかして剥きやすくすると言った単純な作業ではなく、とってもデリケートで複雑、そして大切なフェーズだったんですね

以上、今回はウォッシュド精製における発酵槽での発酵プロセスをご紹介しましたが、実はナチュラル精製、パルプドナチュラル精製でも乾燥段階初期に発酵が作用して、前述の様な風味形成に大きく関わっています

こうして生豆の生産過程に思いを馳せると、それがお客さまに届く前の“焙煎”という工程を担うものとして、重責を感じます。そこでダメージを与える様な焙煎は絶対にしてはいけない。その生豆が持っているポテンシャル(美味しさ)を最大限に引き出して、お客さまにお届けしなければならない!そう思いながら日々、焙煎に取り組んでおります

 

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2025年3月18日火曜日

No.213_パルプドナチュラル(ハニープロセス)


前回(No.212)、ブラジル・ハニーをご紹介させて頂いた中で、「この豆の精製方法はパルプドナチュラル(通称ハニー・プロセス)です」とご説明させて頂きましたが、今回はこれをもう少し詳しくご紹介させて頂きたいと思います

その前段として「精製方法」という言葉を先ずご説明しなければなりません。一言で言うと「果実から種子を取り出す方法」となります

(ご存知かとは思いますが)コーヒー豆は、マメと書きますが、実際は小豆(あずき)やソラマメのようなマメ科の豆ではなくて、さくらんぼの様な果実の種子(タネ)です

精製方法を大別するとナチュラル、ウォッシュド、パルプドナチュラル等があります

ナチュラル式(果実のまま乾燥)

 赤い実のまま、天日干し、その後、脱殻(だっかく)=殻を割って中の種子(コーヒー生豆)を取り出す(今回の写真の上段がその乾燥風景です)

 特徴:乾燥中、果肉のフルーティさが種子(コーヒー生豆)に取り込まれる(発酵が作用)。水資源が乏しい地域でも精製可能。果肉が付いている分、乾燥にも日数(約3週間以上)を要す。放置すると発酵を通り越してカビが生じてしまうので、頻繁に(1日3度以上)撹拌が必要。良い豆作りには手間が掛かります

 いろどりこーひーでは、ゲデブ・ナチュラルブラジル・スルデミナスがこの方式です

ウォッシュド式(果肉を水で洗い流し、殻の状態で乾燥)

 赤い実を皮剥き機(パルパー又はミューシレージリムーバー)でザッと剥いてから、水槽(発酵槽)に23日漬けた後、水の流れる側溝で揉むように果肉を綺麗に落として、殻の状態で約2〜3週間天日干し(今回の写真の下段がその風景。殻付きのギンナンを乾燥させるようなイメージです)。因みにミューシレージとは果肉のヌルヌルした部分のことです

 特徴:発酵槽での発酵を通して、果肉のフルーティさが種子(コーヒー生豆)に取り込まれる。乾燥は果肉を綺麗に除いた殻状態で行うので、①ナチュラル式よりは撹拌管理の手間も少なく、乾燥期間も短め(2〜3週間程度)。これによりクリーンで澄み切った風味のコーヒー豆が出来上がる。大量の水を要するので、水資源が乏しい地域では採用出来ない精製方法。また、果肉の混ざった排水も大量に出るので、その処理システムも必要

 いろどりこーひーでは、グァテマラケニアタンザニアエルサルバドルコロンビアモカ・ハマがこの方式です

パルプドナチュラル(通称ハニープロセス)

 赤い実を皮剥き機(パルパー又はミューシレージリムーバー)でザッと剥いたら、そのまま、約2〜3週間ほど天日干し。①、②の中間的な精製法とも言えます

 特徴:スッキリ感と甘さのバランスが取れた風味。ヌルヌルのミューシレージ付きの状態で乾燥を進めるので、その撹拌等生産者にとっては管理、手間が大変

 いろどりこーひーでは、ブラジル・ハニーのみがこの方式です。ここまで読んで「ん?マンデリンが出てこないぞ!」と気付かれた方はいろどり通ですね!(笑)、実はマンデリンは前述の3つの精製方法とは別の手順を経るため「スマトラ式」と呼ばれ、一線を画しています。こちらはまたの機会にご説明させて頂きますね

ところでこのハニープロセスの名の由来ですが、スペイン語起源のようです。スペイン語でミューシレージのことをMielと言うそうですが、このMielは、同国では同音異義語で蜂蜜の意味もあるそうです。そこに端を発し、アメリカでハニープロセスと呼ぶようになったとのことです。でもなぜスペイン語から?と思ったのですが、この精製方法の発祥は中米コスタリカだそうで、そのコスタリカの公用語がスペイン語であることが理由のようです

一方で、この由来も更に調べてみると諸説あるようで、「ミューシレージの粘着度、色、香りが蜂蜜みたい」と言うのもありました。と言うわけでハニープロセスと言っても、「それで蜂蜜風味になります」と言うことではないんですね...^^;

とは言え、前述のようにミューシレージが付いた状態で乾燥させるこの精製方法は、独特の風味(個性、複雑さ)を育むことに大きく寄与しています

ここまで色々説明してきましたが、お客さまにおかれましては、精製方法は?なんてことはどうか気になさらず、「そんなこんなでコーヒーにはいろいろな風味があるのね」程度に聞き流して頂いて^^;、どうぞお気軽にいろいろな風味をお楽しみ頂けると嬉しいです

 

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2025年3月11日火曜日

No.212_ブラジル・ハニーのご紹介


いろどりこーひーに加わったもう一つのブラジル、“ブラジル・ハニー!”をご紹介します

王林(りんご🍏)を思わせるふわっと優しく漂う甘さ

酸味、苦味が極限まで抑えられた更に飲みやすいブラジルです。そこに感じる淡いフルーツ感はりんごの王林を思わせ、丸みを持った甘さがそのまま余韻につながり、なんとも言えない心地良さに包まれます^ ^(ここで敢えて“王林”としたのは、王林は数あるりんごの品種の中でも酸味が少ない方で、糖度が際立っているからです)

その柔らか、穏やかな風味は、日常飲みに最適です。牛乳、ミルクとも優しくバランスします

ここでちょっと余談ですが...

コーヒーと牛乳を半々に合わせるカフェ・オ・レに使用するコーヒーの定番は深煎りのコーヒーです。これは牛乳の乳脂肪分を深煎りのコクがしっかり受け止め、バランスすることからですが、このブラジル・ハニーと合わせても“優しいカフェ・オ・レ”になり、とってもおいしいです。前者はコーヒーが乳脂肪分を受け止める印象ですが、ブラジル・ハニーは「牛乳自身が持つ甘さを引き立てる」(牛乳が主役でコーヒーが引き立て役...の様な)、そんな印象です

ところで今回のネーミング“ブラジル・ハニー”とした理由ですが...

実はハニーと言っても「蜂蜜の味がします」と言うわけではなくて、前述の通り、むしろ風味キャラクターは“淡い王林感”です

ではなぜ...

実はこの豆の精製方法であるパルプドナチュラル(通称ハニー・プロセス)のハニーから引用させてもらいました。因みに精製方法というのはコーヒーの実(果実)からその種を取り出す工程のことです。精製方法...ちょっと雲を掴むような話題になってきてしまいました^^; 詳しくお伝えしたいのですが、書き始めると今までの倍以上の紙幅を要してしまいそうなので、申し訳ありませんが、次回へ持ち越させて頂きますね^^;

王林(りんご🍏)を思わせるふわっと優しく漂う甘さ

ブラジル・ハニー!どうぞお楽しみください!

 

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2025年3月4日火曜日

No.211_もう一つのハルウララ (^.^)/


現在、季節のブレンドとして“春うらら”を発売中ですが、先日ご来店頂いたご年配の男性のお客様から「これ、昔、一勝もしなかったハルウララから取った名前?」とご質問頂きました😅

一瞬、何のことかさっぱり分かりませんでしたが、「20年以上も前だったと思うけど、競馬で100戦以上レースに出ても連戦連敗、それがむしろ今度こそ勝つんじゃないか!とか、この際、勝っちゃいけない!とか、注目と人気を集めた馬が居たんだよ!」と教えてくださいました

さらに「結局一度も勝たない(馬券が当たらない)ということで、ハズレ馬券までが車に当たらない様に!と、交通安全のお守りにもなったんだよ!」と教えてくださいました

興味深いお話だったので、お客さまがお帰りなった後、少し調べてみたところ...

ハルウララは1996年誕生の牝馬で、1998年高知競馬場でデビュー。2004年の最終レースまで113戦勝利なし。2021年、携帯ゲーム“ウマ娘”にもその名が登場。そして先日2月27日、千葉県のマーサファームで29歳の誕生日を迎え、元気に過ごしているそうです

お客さまから伺った時は、ありゃま、ネーミングが被ってしまいましたか!と思いましたが、ハルウララのほのぼのしたエピソード、当時の人気振りを知るにつけ、そして現在も健在ということで、悪くないな(イイじゃない!)と感じた次第です^ ^

 

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