「美味しさってなんだろう?」
コーヒー豆屋を営む中で時々、そんなことを考える機会があります
例えば...コーヒーが苦手とおっしゃる方から「コーヒーは苦くて」とか、「酸っぱいのがダメで」といったお話を伺うことがあります。また、いろどりこーひーに初めてコーヒー豆をお求めにいらっしゃるお客さまからも、「苦味(酸味)が少ないコーヒーはどれですか?」といったお問い合わせをたまに頂きます
確かに「苦い!」、「酸っぱい!」は、どちらも美味しさを表現するときに、使わない形容詞ですね。(苦味、酸味は、甘味、塩味、うま味と並んで、基本味「5味」で美味しさを形作る上で重要ですが、(焦げ感等)過度な苦味、(質の悪い)酸っぱさは風味を損ないます)
何かの本で読んだことがありますが「ヒトには(生き物と言う括りでも一緒だと思いますが)、体に毒になるものを口にしないという生存本能が備わっている」と
確かに動植物でも外敵から逃れるため身に毒を纏う、外敵はそれでやられないよう味覚、嗅覚で避ける、のような構図はよくありますね
おっと、話がずいぶん拡散してしまいました...
話を戻すと、コーヒーにおいても過度な「苦い」、「酸っぱい」は、ヒトの生存本能が拒絶する世界(味)なので、それはあってはならないものだと考えています。すると「苦く無いコーヒーは美味しいのか?」、「酸っぱく無いコーヒーは美味しいのか?」となると、これは明らかにNOです。仮に過度な苦さ、酸っぱさを“違和感のある味”と表現すると、「違和感のある味が無いだけで、美味しいとはならない」ということです。美味しい!と感じるにはさらに、“心地よく感じられる風味”が備わっていなくてはなりません
コーヒー豆の世界でも生豆中の成分であるクロロゲン酸が焙煎によりクロロゲン酸ラクトンに化学変化してコーヒーらしい魅力的な苦味を作り出したり、質の良い酸がコーヒーの華やかさ、明るさ、心地よい余韻等のポジティブな風味を生み出します
実は今回、このようなテーマについて書こうかな...と思いたったのも、先日の食事体験がきっかけとなっています。と言うのも、「この体験は、コーヒーの世界にも通じる話だなあ」と感じたからです
ある知人から「ここは美味しいから是非行ってみて!」と勧められ、月島にあるエゾ鹿ジビエ料理店“まくら木”さんを訪ねました。そしてエゾ鹿肉の生ハム、カルパッチョ他色々頂きましたが、とりわけエゾ鹿肉のしゃぶしゃぶが秀逸でした。野菜はモヤシとレタスだけのシンプルなものでしたが、鹿肉の甘さに包まれた旨みを存分に味わうには実にぴったりでした。僕もこの年齢になったせいか、牛肉は数口は美味しいなぁと感動しても、やがてこのくらいでもういいかな...と箸が止まってしまいます(残念!)。でも、ここの鹿肉しゃぶしゃぶはどんどん箸が進みました(笑)。赤ワインも実にドンピシャマッチして、本当に至福の時間を過ごさせて頂きました
店の方とも少しお話しする機会がありましたが、長年お付き合いしている北海道の信頼出来るベテラン猟師さんに捕獲をお願いしているそうで、その方の捕獲から絞め(血抜き)までの手順が抜群なのだそうです。そのお陰で良い素材(肉)を扱うことが出来ていると。そこにシェフの調理の腕前が重なることでこのような美味しい料理が出来上がっているんだ!と納得でした
翌日、このお店は巷でもさぞかし評判のお店なんだろうなと思って、ネットの口コミをチラッと眺めてみたところ、異口同音に美味しい、美味しいと書かれていましたが、枕詞で「匂いも全く気にならず」と言うのが多かったですね...
これを見て「違和感のある味がない」の大前提の上に、「心地良く感じられる風味がある」ことが整って、サイコーの美味しさというものが出来上がるんだなぁと改めて思いました
珈琲豆の雑味のない美味しさ創り(焙煎)の世界と同じだなぁと...
いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします