2026年2月24日火曜日

No.262_焙煎中の“心持ち”




店には背の高さを越す、総重量350kgの焙煎機が置かれているので、お客さまから時々、「あの(焙煎機)の操作は大変なんでしょうね?」と、声をかけていただくことがあります

やっている作業は火力操作が中心なので、単純と言えば単純です。とは言え、どんな“心持ち”で操作しているかとなると、結構、奥が深いです。この店を始めて、間も無く5年になりますが、振り返るとその“心持ち”は、少しずつ深化してきたように思います

今、“心持ち”という言葉を使いましたが、それは何を“考えながら”と言うよりは、何を“感じながら”に近い感覚です

では、何を感じながら?

その前に、焙煎で目指していることをお伝えしておかなくてはなりません

それは、春夏秋冬、『再現性を持って同じ味を作り続ける』ことです。これができて初めて、煎り止め温度1℃の違いといった、更に繊細な美味しさへの探究が可能になります

しかし現実には、温湿度は日々変わり、豆種によってその大きさや密度、固さも異なることから、毎回、微妙なブレは生じるので、その制御に全神経を集中させています

前回の『No.261_ログ管理は焙煎の「生命線」』の中でも以下のようなことを記しました

『基本的には焙煎記録表の計画値通り、進行10℃毎に火力を変えていきますが、実際の進行時間は、目標経過タイムに対し、微妙なブレが生じます。例えば進行が少し遅い時は、次のステップの火力を計画火力よりほんの少し強め、遅れの回復を図ります。このような微調整を繰り返しながら、目標のローストプロファイル(進捗計画)をトレースしていきます』 

この『進行が遅れた時は火力を強め...』を更に掘り下げると、どのタイミングで?どの程度強めるか?となりますが、その判断を支えているのが、今回のテーマである“心持ち”です

ここでようやく、前述の何を感じながら?に話が戻ります

結論を先に言うと、『今、どのような流れの中にいるのかを感じながら』です

と、聞いても、なんじゃそりゃ?ですね(苦笑)

『どのような流れの中にいるのか?』の部分をもう少し具体的にお伝えすると、以下の様な“状態”と“方向性”を感じ取るということです

 ①遅れ×拡散傾向:[少し遅れの状態]が広がりつつある方向(火力不足)

 ②遅れ×収束傾向:[少し遅れの状態]だけど回復、収束方向(火力Up中)

 ③順調:進捗計画にピタリと乗っている状況

 ④進み×収束傾向:[少し早い状態]だけど回復、収束方向(火力Down中)

 ⑤進み×拡散傾向:[少し早い状態]が広がりつつある方向(火力過多)

この①〜⑤のブレを±6秒の範囲で、各フェーズ(窯内温度)クリアしていくことを目指して、火力操作を進めています

ここで話はそれますが、

僕の子供時代、ゲイラカイトという凧上げが流行っていました。当時の一般的な(日本古来の)凧は、「凧とつながった数メートルの長さの糸を引きながら走る」のような、上げ方、遊び方でした。一方、ゲイラカイトの糸の長さは40mにも及び、凧が豆粒のように見える高さまで上げるのが醍醐味でした。上げるときはある程度の風が吹いていることが条件になりますが、凧の上がり具合を見ながら、糸をどんどん緩め、高く上げていくのが、最高に楽しかったです^^

そして、最高高さまで達した巡航状態での状況を前述の①〜⑤に当てはめてみると...

 ・一定のテンションで巡航している状況→③

 ・風がふっと強く吹き、糸のテンションがグッと上がるのをこらえる状況

   テンションが強くなったと感じる→①

   凧がグッと持っていかれそうになるのをグイっと引いてこらえる→②

 ・風がふっと弱くなり、凧を弾くテンションが弱まり、そのままだと凧が下降する状況

   テンションが弱くなったと感じる→⑤

   凧からの引きがなくなり下降しそうになるのを、糸を巻きながらグイっと引き上げる→④

分かりやすくお伝えしようと、書き始めたゲイラカイトの例ですが、返って意味不明になってしまったでしょうか? (^^;;

要は凧揚げのとき、無意識のうちにやっている対処方法のようなものを、焙煎中の進行管理の中でも、無意識に近い感覚で操作できると、実に滑らかな進行管理になる...

そんな、焙煎中の“心持ち”をお伝えしたかったのですが、いかがだったでしょうか?

それゆえ、焙煎は、開店前の朝、シャッターを閉め切ったまま、一人集中して取り組んでいます

ブレの無い、毎回、同じ美味しさをお客様へお届けするために!

 

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2026年2月17日火曜日

No.261_ログ管理は焙煎の「生命線」


ログ(Log)という言葉は、主にコンピュータ関連の分野で使われている言葉で、PCやサーバー、ネットワーク機器などの操作履歴を記録・分析することを意味します

この「操作履歴を記録、分析し、次に活かす」というプロセスは、実は焙煎においても同様に欠かせないものです

焙煎のログで主要なものは、「時間軸の中での火力と温度」の記録です

時間軸とは、焙煎機に生豆を投入してから、煎り止め(豆を窯から出す)までの経過時間のことで、その間、デジタルストップウォッチを作動させ、焙煎記録表に数々の書き込みをしながら操作を進めていきます

焙煎記録表はA4サイズで、1回の焙煎につき1枚使用し、一つの焙煎が終了すると、そこは書き込みで一杯になります

記録する内容は、大きく分けて「基本情報」と「焙煎ログ」です

基本情報には、以下のような項目を記入します

・焙煎日

・豆の種類

・焙煎量

・朝、店に着いた時の室温

・豆投入時刻とその時の室温・湿度等

などを記入します。朝の室温や、生豆投入時の温湿度を記録するのは、それらが焙煎の進行に影響を与えるためです(前回の室温と比較することで、今回の進行がどのような傾向になりそうか、予め予測(心の準備)をして、臨むことができます)

焙煎ログ欄には、あらかじめ「計画火力」を記入しておきます

焙煎は100℃以下から始まり、220℃前後まで上昇しますが、その過程で火力をどう操作するか(計画火力)は、過去の膨大なログに基づいて定めています

焙煎開始前の記入は以上ですが、焙煎記録表には、あらかじめ定めた進行タイムが印字されています。進行タイムというのは、投入から煎り止めまでの5℃毎の目標経過タイムのことで、何分何秒と秒単位で定めています

そして、生豆投入です

基本的には焙煎記録表の計画値通り、進行10℃毎に火力を変えていきますが、実際の進行時間は、目標経過タイムに対し、微妙なブレが生じます。例えば進行が少し遅い時は、次のステップの火力を計画火力よりほんの少し強め、遅れの回復を図ります。このような微調整を繰り返しながら、目標のローストプロファイル(進捗計画)をトレースしていきます

一年を通して変わらぬ「いつもの美味しさ」をお届けすること。 そして、1℃の違いを焼き分け、豆のポテンシャルを最大限に引き出すこと。そのすべては、焙煎のログ管理がベースになっています

お客さまの日常に一杯のコーヒーで彩りを添えるため...ログ管理はまさに「生命線」です

 

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2026年2月10日火曜日

No.260_ 最高の一袋をお届けしたい ^^

 


僕が日々目指していること、それは「美味しい"料理”をお届けしたい」ということです

僕にとってのこの“料理”とは、実は“コーヒー豆”のことなんです

こう聞くと、「コーヒー豆って、生豆を焼くだけでしょ!?、料理なの?」と、思われるかもしれませんが、僕としては至って本気です

レストランのシェフは素材を選び抜き、そのポテンシャルを最大限に引き出して一皿を作り上げます

これをシンプルに捉えると、

【良い素材】×【良い調理】=【美味しい料理】

そんなイメージを僕は持っています。そして焙煎においても、

【良い生豆】×【良い焙煎】=【美味しいコーヒー豆】

素材と技術、どちらか一方でも欠けてしまえば、真に美味しい一杯にはたどり着けません

焙煎は途中で調味料を足すことができない「一発勝負」の世界です。火力を繊細にコントロールし、適切な化学変化を促すことで、狙った風味を呼び起こす作業です。そしてこれは乾熱調理と呼ばれています

少々専門的になりますが、その過程では「糖類成分のカラメル化」、「脂肪成分の分解によるディープフライフレーバー化(焼きたてのパンのような香ばしさ)」、「ショ糖成分とアミノ酸成分のメイラード反応」等の化学変化が起きて、コーヒー特有の香り成分や風味が形成されます

今日も、最高の“一皿”ならぬ“一袋”を目指して、焙煎機に向かっています^^


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2026年2月3日火曜日

No.259_創造者久米宏さん


先月、久米宏さんが「肺がんのため81歳でご逝去された」という知らせを知りました

久米さんの“ニュース・ステーション”、“ザ・ベストテン”、“ぴったしカン・カン”などは、僕自身、まさにドンピシャ、その時代に生で観ていたこともあり、当時の記憶とともにいろいろな思いが巡りました

これらの番組はいつ頃、放送されていたのだろう...と、少し調べてみました

・“ぴったしカン・カン”1975年〜1984年(久米宏さん出演時代、以下同様)

・“ザ・ベストテン”:1978年〜1989年

・“ニュース・ステーション”:1985年〜2004年

僕の高校、大学時代、そして社会人なりたての頃とまさに重なっていて、そうそうあの頃は...と、いろいろな記憶が呼び起こされました

“ぴったしカン・カン”での久米宏さんの軽妙洒脱な司会進行ぶり、欽ちゃん、二郎さんとの絶妙掛け合い、はちゃめちゃブリは本当に楽しかったです

当時、友達と何か会話していて、「その通り!」みたいな内容に及ぶと、よく「ぴったしカンカ〜ン!!」なんてやってました(笑)

思えば、“ザ・ベストテン”の時代は、歌謡曲全盛だったような気もします(自分自身の多感な時期と重なっていた、ということもあるのかもしれませんが)

何しろ、パソコンもインターネットもない時代ですから、誰もが音楽情報はテレビやラジオから得ていました

“ザ・ベストテン”は、生放送、生演奏だったことも、大きな魅力でした。カラカラ回転する順位表示板がピタリと止まり、黒柳徹子さんが結果を読み上げると、歌手がそこに登場してライブで唄うのですから、順位もパフォーマンスも本当に毎週ワクワクして観ていました。順位発表後、「◯◯さんは、今日はお休みです」となると、がっかりしたものです。そして翌日は学校で、その観た結果をあーでもない、こーでもないと盛り上がっていたのですから、今思えば、本当に懐かしい思い出です

そして“ニュースステーション”。それ以前、これほど分かりやすく、視聴者目線に立った報道番組はありませんでしたので、とにかく革新的でした。そして久米さんが投げかける質問や疑問は、まさに僕ら(視聴者、国民)が、知りたいことでしたので、なるほどと合点したり、時には政治家への鋭い切り込みに痛快さを感じたりしながら、本当に惹きつけられました

話は変わりますが...

ピーター・ドラッカーは、「企業が存続するための有効な活動(目的)は【顧客の創造】である」と提唱しました

スティーブ・ジョブズがiPhoneを世に送り出したときも、まさに【顧客の創造】でした。それ以前に世の人で「iPhoneのようなものが欲しい」と描ける人は誰一人としていなかったのに、発売されるや否や、今やiPhone(スマートフォン)無しの生活なんて考えられない!と、世界中に浸透していったわけですから、本当にすごいイノベーション、【顧客の創造】です

話を久米宏さんに戻すと、久米宏さんは、番組そのもの、もしくは生き方を通じて、まさにイノベーション、【顧客の創造】を体現されてきた方だと、僕は思っています

“ザ・ベストテン”も“ニュース・ステーション”も、iPhoneと同じように、「こういう番組が観たい!」と、それ以前は誰も描けていなかった番組でした。しかし一度それに触れた途端、視聴者はこんな番組が観たかった!と番組のファンになり、やがてはそれが暮らしの一部になっていったわけですから、久米宏さんは、真の“創造者”です

かくいう僕も、ものづくりを生業にする一人として、番組づくりとは分野は違えどお客さまの“コーヒーのある暮らし”という視点で、ほんの少しでもその“創造”に関われたら...と、そんな思いで、日々豆と向き合っています

当時から久米宏さんのことは、「すごいなぁ」、「素晴らしいなぁ」と眺めていました。それだけに、ご逝去の知らせは本当に残念です

でも、お掛けしたい言葉は、お悔やみの言葉よりも、

「久米宏さん、サイコーでした!ありがとうございました!」の思いです


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