2024年5月28日火曜日

No.171_生豆の固さはそれぞれです


焙煎前の生豆ですが、豆種によってその固さが異なります。

(いきなり余談ですが...)ここで【かたさ】を表記するのに【固さ】、【堅さ】、【硬さ】、どれを使うかすごく悩みました。色々調べてみたんですが、『放送用語委員会記録』に以下の様な記載がありました。【堅い】:「中まで詰まっていて形が変わらない状態」これがイメージに近いと思ったのですが、対義語が【もろい】とあってなんか違うなぁ...。【固い】:「固体の物理的なかたさ」、対義語が【ゆるい】、【柔らかい】とあって、これもなぁ...。【硬い】:「力を加えても変わらない状態」対義語が【軟らかい】、違うなぁ...そして最後の注意書きに「固、堅、硬の何れにするかに迷った時は固を使う。更に迷う時はひらがなもおすすめ」なんてありましたw。 と言うわけで以下では、ひらがなを多用させて頂きます(苦笑)。

このかたさの違いは組織の蜜実さの違いとも言い換えられます。(蜜実な生豆の方がかたく、そして重い)

では、この蜜実さの違いはどこから来るのか?ですが、これは産地=生育環境の違いから来ます。

先ず以てコーヒー豆は、コーヒーノキの果実に育まれる種子だと言うことです。さくらんぼのタネのイメージですが、さくらんぼが開花後、2ヶ月程度で収穫期を迎えるのに対して、コーヒーノキは開花後、小さな緑の実が出来てから、実も大きく成長しながら次第に黄色味掛かって、オレンジ色味掛かって、最終的に赤く熟して収穫出来るまで6〜9ヶ月もの月日を要します。(因みにこれはいろどりこーひーで扱っているアラビカ種の話で、ロブスタ種は更に月日を要します。また、黄色く熟す品種もあります。)

この6〜9ヶ月と3ヶ月もの幅があるのは、生育環境(主に気温、他に雨量、日射、土壌)によるところが大きいです。

朝夕の寒暖差にさらされる環境で育った豆(種子)は、実の生育に月日を要し、かため(重め)、比較的温暖な気候下でスクスク早めに育った豆(種子)は、やわらかめ(軽め)になります。

突飛な例えですが、極寒のシベリアに生育する針葉樹の木と温暖な気候のところに生育する広葉樹の木のかたさ、重さに違いがあることと理由は似ています。シベリアの針葉樹は低温の厳しい環境下で生育がゆっくりなので年輪も細かく、組織が密実で、かたく、そして重い木になります。

ここで昼夜の寒暖差が大きいところ(比較的高地)で生育した豆と、小さいところ(比較的低地)で生育した豆の違い(傾向)を箇条書きにすると以下の様になります。

 ①比較的高地、昼夜の寒暖差大:生育遅め、種子の組織蜜実、かため、重め、焙煎時の火力は強め、ゆっくり生育する過程で個性的且つ、豊かな“酸”が醸成され、それが華やかで魅力的な風味を演出、いろどりこーひーでは赤い袋に詰められた華やか系。(一方でこの「かたい」と言うことは高温のヤキにも耐え、且つ“酸”のボリュームが深煎りのコクともバランスするので深煎りにも向いています。)

 ②比較的低地、昼夜の寒暖差小:生育早め、種子の組織疎、やわらかめ、軽め、焙煎時の火力は弱め、早い生育のため“酸”の醸成も少なめでまろやかで優しい風味、いろどりこーひーでは白い袋に詰められたまろやか系。

因みにここで記載した“酸”は、ネガティブな風味の酸っぱさのことではなく、ポジティブな美味しさ(フルーティ、フローラル、スッキリ感、キレの良さ等)に結びつく、上質な“酸”のことです。コーヒーには大なり小なり含まれています。これはコーヒーは工業製品ではなく、果物!と捉えると分かりやすいかもしれません...

と言うわけで少し長くなってしまったので今回はこの辺で。

次回、いろどりこーひーにおける具体例として①グァテマラ(かため)、②ブラジル(やわらかめ)を通して、生豆のかたさと風味の傾向についてもう少しご紹介させて頂ければと思います。^ ^

 

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2024年5月21日火曜日

No.170_コーヒー生豆は麻袋で輸入されます


コーヒーの原料(焙煎前の生豆。[ナママメ]と読みます。)は、麻袋(こちらは、[マタイ]と読みます。)の形で輸入されます。この袋は文字通り、麻(アサ)製で船での長旅(輸入の移動)にも耐えるとても厚手でガッチリした素材です。

因みに生豆はこの麻袋に直(じか)に入っているのではなく、更にもう一層、[グレインプロ]と呼ばれるこれまた厚手のビニール袋に入れられた上で収納されています。このグレインプロは、しっかり封がされていて、生豆を湿気から守るとともに衛生上も重要な役割を果たしています。

麻袋一袋の重量は産地によって、そしてロットによって微妙に異なるのですが、概ね30kg内外です。数十年前は、60kg袋が主流だったそうですが、扱いやすさの観点で現代は30kg袋が主流です。(コメの流通も昔は一俵60kgだったものが、今や30kg袋となったのも理由は近いかもしれません...)

いろどりこーひーでの原料(生豆)調達は、豆種毎に年間使用量を購入予約しています(詳しくはつぶやきNo.130をご参照ください)。それら購入予約したものは、国内の低温倉庫に保管料をお支払いした上で保管頂いています。

それぞれの豆種で店舗在庫が少なくなると配送注文をしてその倉庫から納品頂くのですが、配送されてくる生豆には、看貫(かんかん)表と呼ばれる伝票が添付されています。この看貫表には品名(豆名)の他、日本の港への入港日、船名等トレーサビリティに関わる内容、そして麻袋重量(麻袋そのものの重量+生豆重量の内訳付き)が記載されていて、後日、契約単価(円/kg)×  生豆重量に関わる請求を頂き、お支払いすると言う流れで納品が繰り返されます。

麻袋への印字内容はそれぞれですが、銘柄、産地名、輸入に関わる情報の他、ロゴやキャラクターのような絵面もあり、それぞれに個性、趣があります。

ご来店頂くお客さまからも『あれ、可愛いですね〜』、『あれ、かっこいいですね〜』とお声掛け頂く事もたまにあります。そして店では、ご希望されるお客さまには、この麻袋を無料で差し上げています。

貰って下さるお客さまの利用動機もなかなか面白くて、物置の収納袋としてとか、ガーデニングの鉢包みとしてとか、飼い猫の寝床に、バッグの生地に、なんてお話もありました。麻袋までが、形を変え、お客さまの生活に溶け込んでいくのは、なんとも嬉しいことです。^ ^

 

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2024年5月14日火曜日

No.169_煙突掃除


先日、お客さまから『外に煙突が有りますけど、煙突掃除もするんですか?』と、ご質問を頂きました。

回答を先に申し上げると『します』です。

ところで煙突は2本あって、【煙突①】は焙煎の排気、そして【煙突②】はこのつぶやきNo.167でも触れましたが、焙煎直後の豆を冷やすための冷却器に接続されているもので、店内の空気を吸って外に出しているものです。(【煙突②】は単なる空気の通り道と言うことです)

因みに【煙突①】、焙煎の排気は集塵機を経て排気されますので、豆のチャフ(焙煎によって剥がれる豆の薄皮)や塵の様なものは外部には放出されません。そしてその排気は、焙煎後半では200℃を超える熱気となります。(この熱気は透明で、白い煙がモクモク出る様なこともありません。)

ここまでの説明を聞くと『煙突と言っても塵も出ない透明な熱気だったら、煙突内も汚れず、掃除も不要では?』と思われるかもしれません...

実はこの排気、透明ではありますが、焙煎の香りがします。そしてその香りにはとっても微量ではありますが、コーヒー豆から発生するオイル成分も含んでいます。

仮に何年も煙突掃除をせず放っておくと、このオイル成分が煙突内側に少〜しずつタール状に固着して煙道を狭めて行くことになります。

それを避けるため、いろどりこーひーでは3ヶ月毎に日を決めて煙突掃除をしています。金属製の煙突掃除ブラシを使って、煙道の中を擦って清掃するのですが、前述の通り、煤(スス)のようなものは出ず、ほんの少し固着し始めたタール状のものを引っ掻くイメージで、少量の微粉が出る程度です。

因みに煙突掃除をせず、煙道が狭まっていくとどうなるか?ですが、→排気が弱まる→焙煎窯内に熱が籠る→パターン①:温度が上がり豆の表面焦げが発生し、苦味や雑味が発生する。パターン②:実務としては温度上昇を解消するため、火力を下げて対応することになりますが、これにより❶熱風の温度、窯のドラムとの❷接触熱、窯そのものからの❸輻射熱のバランスが崩れ、豆のデベロップ(成分の化学変化)に差異が生じる→味が変わる。と言うことが起きてしまいます。

と言うわけで、豆の風味の安定、更なる美味しさへの探究のため、定期的な煙突掃除はとても大切です。

 

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2024年5月7日火曜日

No.168_同じに出来ることは全て同じにする


『同じに出来ることは全て同じにする』ん?いったい何のことだろう?と言うテーマですねw

これは、『いつも安定した同じ風味のコーヒー豆を作る(焙煎する)』、『更なる美味しいコーヒー豆を作る』ために必要なこと、必須なことと僕が考えていること(行動パターン)です。

話は全く変わりますが、イチローさんがマリナーズの現役時代、『朝食は毎日カレーです』と言う話を聞いたことがあります。その時は、毎日カレーで飽きないのかな?、カレーはそんなに栄養があるのかな?くらいにしか捉えていませんでした。また、イチローさんは、試合開始前、(他の選手より早く)毎回同じ時間前に球場入りし、入念なストレッチの他、試合に向けた同じルーティンをこなしているとの話も聞きました。そして打席に入った時の、あのルーティン動作です。

今、思うと(これは僕の勝手な想像ですが)、イチローさんは、『いつも安定した同じパフォーマンスを発揮する(ヒットを打つ)』、『1本でも多くのヒットを打つ』、『更に更に打率を上げる』ために、打席前後の全ての行動、更には生活そのものを『同じに出来ることは全て同じにする』としながら、野球道を極め続けていたのではないのかな?と感じています。

と言うのも仮に打ち損じた時、『次の打席は◯◯を改善しよう』と考えると思うのですが、例えば『テイクバックをほんの0.1秒早い心持ちでセットしよう』とか、『打席に立つ位置を気持ち3㎝ほど後ろにしてみよう』みたいなことを(同時ではなく)一つずつ試して、対処、改善して行くのではないのかな?と僕は推測しています。この時、仮にも試合前のストレッチが日によって違い、『今日はストレッチが少なかったので可動域が少なかったかな?』とか、『今日は朝食で△△を食べたのが悪かったのかな?』みたいに対処する心当たりがいくつもあったのでは、前述の0.1秒、3cmなんて検証は不可能で、フォームを崩して行くだけだと思うのです。

僕自身が取り組んでいることは、イチローさんのソレとは、内容も次元も全く異なりますが、『美味しい豆を作り続けたい』と言う思いがあるので、心持ちとして見倣いたい、真似したいとの思いがあります。

朝、店に着いたところからの僕の流れは...

扉を開けて店内に入る。照明スイッチを点ける。換気口を開け、換気扇を回す(室内にいつも同じ空気の流れを作り、焙煎は部屋全体の空間でヤク)。焙煎機の主電源を入れる。焙煎機に点火する(予熱開始)。定めた火力にセットする。ストップウォッチを作動させる(予熱開始から1窯目投入までの時間計測)。その間、1窯目の豆を計量する。ノイズキャンセリング[静音機能]を作動させた無音のヘッドフォンを装着する(集中力を高めるため)、焙煎記録表に日付、天気、朝の室温、湿度、焙煎する豆種、その在庫数量を記録する(因みに前日の仕事終わりに翌日焙煎する豆種を定め、その豆ケース、過去の焙煎記録表、それを記入するテーブル、椅子、筆記用具、計り、ヘッドフォン等は焙煎機横にセッティングしてから店を出ます)、そして焙煎する豆種の前回の焙煎記録表をテーブルの上に広げ、その実績を元に、今回の焙煎記録表に温度進行ごとの計画ガス圧(火力)記入、予熱終了後、定めた窯内温度になったら生豆投入...

これら一連の流れは毎回一緒で、動作も『同じに出来ることは全て同じにする』様、心掛けています。

こうして焙煎(焙煎中は更に多くのルーティンがあります)に臨むことによって、環境変化から生じる微妙なブレもズレまで行かない段階で対処が可能になります。(【ブレ】と【ズレ】は意味合いが大きく異なります。)

因みに焙煎以外にもブレンドを作る手順やEC注文発送手順他、全ての店内作業で『同じに出来ることは全て同じにする』様にしています。

そして焙煎中は勿論、自身の体調が良好でなくては、まともな動作はおぼつきませんので、寝る時刻、起きる時刻もほぼ一定に体調管理には気を付けています。

 

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