2024年4月23日火曜日

No.166_焙煎の生豆投入


今回のテーマは“焙煎の生豆投入”です。ちょっと焙煎のマニアックな話題ですが、宜しかったらお付き合いください...

今回掲載した写真は、焙煎機のホッパー周りです。先ずはここに生豆をセットする(入れる)ところから焙煎はスタートします。その下部に四角いクリ抜きがある板状のものが見えるでしょうか?この板はシャッターなんて呼ぶこともありますが、これを押し上げることによって生豆が重力落下して窯の中に投入されて行きます。

この生豆を投入するタイミングは、毎回同じ焙煎工程を進める上のスタートとして、とても重要です。

2窯目を例に説明すると、1窯目の焙煎終了後、焙煎機のガスバーナーを切ると(種火状態にすると)窯内温度が徐々に下がって行くので、それがある温度になったタイミングで再点火、そして生豆を前述の手順で投入しますが、この時はデジタル温度計を直視して、1℃のズレも無いタイミングを計りながら操作します。(因みに1窯目は2窯目以降の焙煎開始と同じ状況下にするため、事前に窯に余熱を与えるステップを経ます。)

生豆を投入すると窯内温度は、どんどん下がって行き、ある温度まで下がると上昇に転じます。この変わり目の温度(最低温度)をボトム又は、中点(ちゅうてん)と呼びます。

突飛な例えですが、沸騰した湯の中に乾麺を投入して茹で始める光景を思い浮かべてみてください。グツグツの沸騰状態が乾麺投入を期にさっと収まって(湯温が下がって)、しばらくすると又グツグツと沸騰し始めますね。この時、底を付く湯温に当たるのがボトム温度です。

実は焙煎において、投入温度以上に重要なのがこのボトム温度管理です。

仮にもボトム温度が設定値より高止まりすると生豆の表面焦げが発生して、極端な場合は苦味、辛味と言ったネガティブな風味をもたらします。そこまで極端でなくても5℃も超えると口当たりの円やかさやが損なわれ始めます。逆に低すぎると焙煎前半の生豆の水分抜きが不十分となり、結果的に明るさの無い、重たい風味を招いてしまいます。

その為、ボトム温度はある定めた温度±1℃で年中固定管理しています。

一方、投入温度は、1年を通して捉えると大きく異なります。と言うのも冬の朝、冷え冷えとした室内に保管している冷たい生豆を投入するのと、真夏、暑い室内に保管している温い生豆を投入するのでは、投入後、ボトムに向かう温度低下に大きな差異があるためです。

暖かくなっていくこの時期はボトム温度が+1℃寄りにブレ始めるので、その時は次の焙煎で投入温度を1℃下げて修正を掛けます。こうして結果的に冬と夏の投入温度では10℃以上の開きがあります。

ブレの無い風味の実現のために行っていることは多々有りますが、今回はその一旦、生豆の投入に関わるお話でした。

 

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