2026年4月28日火曜日

No.271_酸を味方につける焙煎


コーヒーを飲んで「酸っぱいのは苦手で…」とお話されるお客さまは少なくありません。でも実は、その“酸”こそ、コーヒーの魅力を決める大切な要素でもあります

コーヒー豆は果実の種(タネ)ですから、どの豆も少なからず“酸”を含んでいます(コーヒーの実は、“コーヒーチェリー”とも呼ばれ、さくらんぼのように赤く熟します)

コーヒーの風味を印象付ける成分は、その一粒の豆の中に細かくは100種類以上もあるとも言われますが、とりわけこの“酸”の存在が大きく影響します

コーヒーにおいて“酸”と聞くと、多くの方は、「イヤっ!」と顔をしかめられます

ちなみにここで“酸”と表現し、敢えて“酸味”と表現しなかったのには訳があります。“酸味”と聞くとどうしても「酸っぱさの度合い」と受け取られがちだからです。けれど、“質の良い酸”は、そのコーヒーの風味や美味しさを印象付ける、とても大切な存在です

ところで“質の良い酸”がある一方で、"質の悪い酸”というものも確かに存在します。それは大別すると以下のようなことに起因します

 ①素材起因:産地で完熟した実(コーヒーチェリー)以外に、未熟な実などが混ざったまま収穫したり、精製段階での品質管理が不十分な場合、悪い酸の素ができてしまいます

 ②焙煎起因:焼きムラ。特に芯に焼き残しがあると、悪い酸を(ときにエグミさえ)生みます

 ③保存起因:豆(粉)は空気に触れることで、ゆっくり酸化し、風味が落ちていきます

こうした“質の悪い酸”は、本来、コーヒーが持っている風味とは別に付加されたネガティブ要因ですから、それを口にしたとき、拒絶反応が起こるのももっともです

さて、ここからは、“質の良い酸”のお話です

僕はこの酸を“キャラクター”と“ボリューム”の観点で捉えています

キャラクターというのは、直訳すれば性格、個性といったところですが、焙煎においてもそれを適材適所に“活かす”ことがとても大切です

ひとことに「このコーヒー、とってもフルーティ!」と言っても、ではそれは何のフルーツのキャラなのか?ということです。それが豆の風味特徴として現れます

いろどりこーひーのラインナップでいえば、ゲデブナチュラルはアプリコット、ピーチのようなストーンフルーツ系。モカハマは、ベルガモット系で、まるで紅茶のアールグレイのようなキャラを持っています

そしてボリューム。コーヒー豆が持っている酸は、その量も豆種によってまちまちです

一般的に高地産の豆の方が、酸のキャラも個性的で、そのボリュームも多くなります。これは生育中に昼夜の寒暖差にさらされ、実がゆっくり成長していくためです(小さく結実してから赤い実となり収穫されるまで、8ヶ月前後かかります)、その過程で酸もじっくり作り込まれていきます

一方、ブラジルなどは、比較的穏やかな環境で育つ産地も多く、華やかな酸より、やわらかくナッツ感や甘さ主体の風味になりやすい傾向があります(そのブラジルでも、高地でスペシャルな美味しさの豆を作っているエリアもたくさんあります)

「焙煎では酸のキャラを適材適所に活かす」と前述しましたが、これも話し始めるといろいろあるのですが、一番のキモは、煎り止めの温度です。きっと皆さんも耳にしたことがある、浅煎り、中煎り、深煎りというものです

酸が際立つキャラとボリュームを持っている時は、酸のキャラの尖(とが)りがほんの少し丸みを帯びたところで止めた方が、そのキャラを最大限に楽しむことができます(これが浅煎りです)

実は深煎りにする豆にも酸の存在は重要です。ここでは、ボリュームがものをいいます。ロースト感が深まっても、それにマスキングされて消えてしまわない酸のボリュームがあると、それがロースト感とバランスして、えも言われぬ魅力的な風味を生み出します(良い深煎りには素材由来の酸の厚みが残っています)

また、酸のキャラが際立つほどでなくても、クリーンな明るさを持っている時は、ロースト感を重ねていく中で絶妙なバランス点が現れ、柔らかな甘さが楽しめる、心地よくまろやかなコーヒーになります(これが中煎りで、ブラジルなどはその代表です)

焙煎において、浅煎り、中煎り、深煎りに共通している観点は、「酸のキャラとボリュームを活かして、その豆にとって一番美味しくなる焼き方をする」ということです

焙煎度合いというものは、決して焙煎人の独りよがりで、「こんな味にしてやろう」などと、浅くしたり、深くしたりするものではないんですね

豆の酸のキャラとボリュームに耳を澄ます...酸を味方につけると、焙煎はより楽しく、出来上がった豆も魅力いっぱいになります^ ^

 

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2026年4月21日火曜日

No.270_信頼の連鎖


コーヒー豆は、僕が一人で選び、一人で作っているように見えるかもしれません。でも実際には、その一袋の裏側には、多くの人との信頼関係があります

つぶやき『No.268_素材選びへのこだわり』の中で、「焙煎の原料である生豆は、バイヤー兼インポーターの方から仕入れる」と記しました。そして提示されたサンプルをカッピングし(素材を見極め)、「僕自身が納得したものを購入する」ことも記しました

一方でこのバイヤーの方が仕入れてくれる生豆はどれをとっても“高品質”なので、その中から「いろどりこーひーのコンセプトにマッチした生豆を選択している」というのが実際に行っている作業です(良し悪しを選別しているわけではなくて)

ここで“高品質”というのは、単に“高級品”という意味ではありません。言葉にしてお伝えるすのはなかなか難しいのですが、敢えて言葉にすると「クリアーで、明るく心地よい酸を持っている素材」といったところでしょうか

クリアーというのは、「雑味がない」とも言い換えられます。雑味は、完熟実以外の未熟実や過熟実を混ざったまま収穫したり、精製過程(果実を乾燥、脱殻して生豆を取り出す過程)で、過発酵が起きたり、乾燥期間が短過ぎたり、長過ぎたり、生豆製造後の保管や輸送中の状態がよろしくないと発生します

明るく心地よい酸は、良い土壌、風通しが良い土地で丁度良い日射、降雨を受けて、且つ施肥や剪定を適切に行い、真っ赤に熟した完熟実だけを丁寧に収穫する過程で育まれます

「クリアーで、明るく心地よい酸を持っている素材(生豆)」を作り出すのは、それに関わる方々の並々ならぬ熱意、努力、労力の賜物といえます

ところでバイヤーの方というのは、産地にふらりと出向いて、サッと買い付けてくるわけではありません。それぞれの国に継続して取引している農園や農協組織や生産者組合のような団体があって、それらの方々と長年の信頼関係を積み上げてきて初めて、高品質な生豆の提供が受けられるとのことです。この話は、バイヤーの方から直接教えて頂きました

バイヤーの方が、産地の方と信頼関係を築くためには、一定量以上を継続して買い続けることも重要です。産地の方から見れば、「この人は毎年うちの豆を正当に評価して、必要としてくれる」という安心感があるからこそ、最高の品質を優先的に確保してくれるわけです

それを実現するにはバイヤーの方も日本国内に多くの顧客(焙煎会社、焙煎店)を持つ必要があります

ここにも信頼関係が存在します。焙煎店からすると「この人が販売する生豆の質は確かだ」、バイヤーさんからすると「この会社、この店は毎年一定数量購入してくれるおかげで、自分も産地の方と良好な関係が築ける」と

コーヒー業界の中では、【From Seed to Cup】なんて言葉があります。直訳すると「種(タネ)からカップまで」となりますが、これは「農園での一粒の種が芽吹き、生育・収穫・精製・輸送・焙煎・抽出を経て、一杯のコーヒーになることを意味しています。そしてその全てのプロセスの品質管理により、美味しい一杯のコーヒーが生まれるといった、主に“品質管理”の観点で述べられている言葉です

しかし僕は、この【From Seed to Cup】という言葉を“信頼関係の連鎖”の観点で捉えています

[農園⇄バイヤー⇄いろどりこーひー]の信頼関係の連鎖です

そして僕の先には、

[いろどりこーひー⇄お客さま]の信頼関係があります

一つの例ですが、いろどりこーひーでは豆を200g袋と500g袋で販売していますが、常連さんの多くは、新発売するシングルであれ、ブレンドであれ、躊躇なく500g袋で購入してくださります。これは本当にありがたいことです

この「ありがたい」というのは、単にいっぱい買ってくださるからという意味ではありません。初めて試す豆を500g袋で買うというのは本来勇気がいることです。それを躊躇なく500g袋を選択頂くというのは「いろどりこーひーで売られている豆は、自分の嗜好の一定基準以上にあるから、新種が出たというなら試してみよう」という信頼があるからこそ、起きることだと、僕は「ありがたく」捉えています

この信頼は絶対に裏切れません

信頼の連鎖で届いた生豆を僕が焙煎し、それをお客さまへ信頼の連鎖と共にお届けする。これは非常に尊いことだと思っています

これからも、農園からバイヤーへ、バイヤーからいろどりこーひーへ、そしていろどりこーひーからお客さまへ。そんな信頼の連鎖を、丁寧につないでいきたいと思います

 

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2026年4月14日火曜日

No.269_グァテマラ(ラスロサス農園)のご紹介


今回は、グァテマラの新豆“ラスロサス農園”のご紹介です

甘い黒葡萄を思わせる優しい風味

ミルクチョコレートのような、滑らかで心地よい質感

ラスロサス農園(Finca Las Rosas)はグァテマラの北部、メキシコ国境にほど近い、ウエウエテナンゴ(Huehuetenango)地域にあります

この辺りは、標高1,500m〜1,700mに位置する急峻な山岳地形で、コーヒーノキはその斜面で栽培されています

高地特有の昼夜の寒暖差により、チェリー(コーヒーの実)はゆっくりと成熟し、これが明るくクリアーで質の高い酸と、糖度の高いしっかり感のある甘さを育んでいます

今回ご紹介するグァテマラ(ラスロサス農園)の酸は、甘い黒葡萄をイメージさせる柔らかな印象です(この酸はとてもクリアーで優しいので、口当たりの良さとともに甘さの感覚で伝わってきます)

ラスロサス農園は約20haにも及ぶ規模を誇りますが、それを細かく区画設定し(これを“マイクロロット”といいます)区画ごとにテーマを決めて個性的かつ魅力的な風味を追求しています

そして今回の豆は、ガレラス(Galeras)と名付けられた区画から生まれたマイクロロットです

甘い黒葡萄系の優しい風味

ミルクチョコレートのような滑らかな質感

日々の一杯の中で、やさしい甘さを感じていただけたら嬉しいです

どうぞ、お楽しみください

 

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2026年4月7日火曜日

No.268_素材選びへのこだわり


コーヒーの味は、焙煎で決まると思われがちですが、実はその前の「素材選び」もとても重要です

それゆえ、素材選びにはこだわっています。自家焙煎における素材とは、生豆のことです

生豆は、バイヤー兼インポーターの方から購入します。バイヤーとは、産地へ出向き買い付けをする方で、インポーターはそれを日本へ輸入手続きする方のことです

購入に際し、バイヤー兼インポーターの方からそれぞれの豆のサンプル(焙煎されたコーヒー豆)提示を受け、それをカッピング(ワインでいうテイスティングのようなものです)して、気に入った風味のものを選びます。なお、このカッピングは、同じ銘柄であっても、作付け年度が変わるたびに行います

購入は“取り置き依頼”という形で、今後1年間使用する分を予測して「ブラジル◯袋」のように麻袋(約30kg/袋)の袋数で依頼します。その間、国内の低温倉庫(通年14℃前後で温湿度管理された倉庫)で保管していただき、その後は必要な分だけ都度、店に配送してもらうことで、年間を通じて安定した品質と在庫を維持しています

このように購入を決めるカッピングは、一言でいうと“味見”のようなことなのですが、この時はその素材の明るさ、クリーン度、酸のキャラクターとボリュームといった観点を重視してカッピングします

明るさやクリーン度(雑味がなく透明感のある味わい)というものは、産地での生育環境(日射、降雨、通風、土壌、施肥等)、収穫(赤い完熟実だけを選別収穫しているか)、精製(果肉除去、乾燥、種子(生豆)の取り出し工程)その全てが適正に進められてきたかを把握できる指標でもあります

ちなみにサンプルの豆は、意図的に浅煎りで焙煎されています。それは前述の“酸のキャラクターとボリューム”をチェックしやすくするためです。そのため、この段階では即、「美味しさ」を確認するわけではなく、「自分がこれを焙煎すると美味しく出来て、それをお客さまにご提供すると喜んでいただけるに違いない!」そんな観点でサンプルを評価します

正直なところ、この見極めプロセスに慣れるには、1〜2年ほど掛かりました(「突き詰めている」と言う意味では、未だ途上なのですが...)

この素材の見極めに慣れてくると、焙煎が一段と面白く、楽しくなりました

サンプルカッピングで感じた酸のキャラクターとボリュームをもとに、しっかりと熱を入れ、適切なロースト感と融合させることで、且つロースティングポイント(煎り止め温度)微調整の中でバランスをとることで、酸の明るさを保ちながら、甘さに包まれたより魅力的な風味へと仕上げていけるようになりました

ところで良い素材を使うと、焙煎は楽になると思いますか?逆に大変になると思いますか?

もしかしたら、「素材が良い分、焙煎が多少ブレたって、それなりの美味しさの豆が出来上がって楽なんじゃないの?」と思われる方が多いでしょうか?

実は、その逆、大変になるんです...でも、なぜ?ですね!

良い素材というのは確かに“それなりの美味しさ”は作りやすくなります。しかし、所定の焙煎プロファイルをブレなくトレースし、ロースティングポイント(煎り止め温度)も1℃の差が、ドンピシャにハマると、ぐんと美味しくなる研ぎ澄まされたポイントを持っています。つまりピンポイントの最高の美味しさを引き出すため、焙煎もより研ぎ澄ましていかなくてはならない」という大変さ、慎重さが求められます

こうして出来上がった豆をお客さまにご提供し、いろいろ感想やご好評を頂くことが、僕自身、何よりの励みとモチベーションになっています

これからも“お客さまの美味しい!”のために、素材にこだわって、より美味しいコーヒー豆のご提供に精進していきます

 

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