2026年6月30日火曜日

No.280_焙煎後の赤ペンチェック


今回の妙なテーマ「焙煎後の赤ペンチェック」ですが、実はこれ、焙煎直後にいの一番に行うルーティン作業なんです。この「直後に」ということが大切で、たった今、焙煎した中で“感じたこと”がホットな感覚のうちに実施することを心掛けています

1回の焙煎(生豆投入から窯出しまで)は、20数分で終了しますが、その間、焙煎の進捗管理のため、焙煎記録表に各温度毎の通過タイム、その時々の実施ガス圧(火力調整の目安)等、記入しながら進めます(黒ペンで)

焙煎記録表にはあらかじめ、生豆を投入するタイミングの窯内温度と、進捗温度10℃毎に切り替える計画ガス圧を記入しておきます(「10℃毎」というのは計画段階で、実施段階はさらに細かなチェックと切り替え操作を行います)

ちなみに美味しいコーヒー豆を焼き上げるには、窯内温度の上昇スピードは一定ではなく、あるところは早く(火力を強く)、あるところは遅く(火力を弱く)する必要があります

過去の店主のつぶやき「No.178_焙煎中、ブレは生じてもズレは生じさせない」でも少し触れましたが、焙煎中は大なり小なり、進捗のブレが発生します

進みがさらに早まりそうな時は計画ガス圧より実施ガス圧を絞ったり、遅れがさらに広がりそうな時は、逆に計画ガス圧より実施ガス圧を上げたりと、軌道修正しながら、計画進行に対しズレなく、全行程を正確にトレースするように制御していきます

そして焙煎が終わると、焙煎記録表は書き込みでいっぱいになります

そこから黒ペンを赤ペンに持ち替え、これを評価し、次回の焙煎に向けた計画を立てる作業が、今回のタイトルにもなっている“赤ペンチェック”という作業です

一番の目的は、「次回焙煎時の計画ガス圧を定める」ということになりますが、この作業は今回操作した数値(ガス圧)をそのまま次に適用すればいい、というわけではありません

起きた結果、施した結果に対し、評価、考察、立案といった思考をめぐらす必要があります

単純な事象としては、遅れ始めたフェーズ(窯内温度が10℃上昇する間を1フェーズと捉えます)があれば、「次回はもう少し強めの火力(+α)を入れよう!」となります

一方で遅れたり、戻したり、進めたりの対処が始まってからは、もう少し広い視野を持って事象を捉える必要があります

例えば、こんなケースがあったとします

「あるAフェーズで進捗が6秒遅れたので、次のBフェーズでガス圧を強めて、次のCフェーズでは±0に戻って計画行程に乗った」

この場合、遅れ回復のためにガス圧を強めたBフェーズは、窯全体も多めに温めたことになるので、その蓄熱も次行程のCフェーズに作用して、結果的に±0だったと読み取ります

すると次回の方針はどう考えるか...です

ここが焙煎の難しいところなのですが、単純に“遅れたから火を強くする”ではありません。なぜなら、焙煎機の窯は鋳物(分厚い鉄)で覆われていて、そこへの蓄熱も経過と共に変化し、それが進行に影響を与えるからです

こんな時、僕の頭の中では、次回に向けて以下のような組み立てを行います

 ・Aフェーズ: そもそも遅れを発生させないよう、次回はガス圧を【+α】する

 ・Bフェーズ: Aが改善されてオンタイムで入ってくると仮定すれば、もう急いで早める必要はないので、次回はガス圧を【-α】で計画する

 ・Cフェーズ: Bフェーズでガス圧を【-α】した分、蓄熱が下がることを計算に入れ、次回のガス圧は【+α】で計画する

何をいってるのか意味不明ですね...苦笑

僕自身は日常の思考ルーティンを思い起こしながら書いているので、十分理解して書いているつもりではあるのですが...(^^;;

これを全ての焙煎で毎回行います

そして次に焙煎するときは、同じ豆種の前回の焙煎表を広げ、そこに記載のある赤ペンの内容(ガス圧計画)を今回の焙煎表に転記して、焙煎に臨みます(この内容は豆種毎に全て異なります)

その際、基本的には計画通り進めますが、朝の店内室温が前回と3℃以上異なっていたり、前回の天候は晴れだったけど今日は雨(湿度が高い)のように環境に違いがあるときは、今までの経験則も当てはめ、ガス圧も意識的に微調整しながら進めていきます

これが春夏秋冬の温湿度変化にも対応しながら、年中、安定した味わいの豆づくりにつながっています^ ^

こうして書き出してみると、とても細かな作業に感じるかもしれません。でも僕が毎回この赤ペンチェックを続ける理由は、単に焙煎技術を高めたいからだけではありません

その先にある、“いつ飲んでも美味しい”というお客様の安心につなげたいからです

昨日飲んだのも美味しい
今日飲んでも美味しい
季節が変わっても、変わらず楽しめる

そんな一杯を届けるために、これからも小さな改善を積み重ねていきたいと思っています

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします

   バックナンバーは、コチラ■ 

2026年6月23日火曜日

No.279_店で開催している“コーヒー体験”のご紹介


店では、ご希望いただいたお客さまに、“コーヒー体験”という時間をご用意しています

これは、僕自身が、お客さまとコーヒーを通していろいろなお話をしたい、そんな思いから始めたものです

ところで、“コーヒー体験”と聞いても、どんなことをするのか、おそらく想像できないですね(苦笑)

他に似た表現では、“コーヒー教室”とか“コーヒーレッスン”というものが、やや近いかもしれませんが、この“教室”や“レッスン”という単語には(あくまでも僕の主観ですが)、何か「教える」のニュアンスを感じて、僕としてはどうもしっくり来ないのです。そのため、あえてこのネーミングにしています

一方で、お客さまと「“コーヒー”をキーワードにいろいろお話をしたい」という思いはすごくあります。そして、それを実現させるのが、いろどりこーひーの店内で開催している“コーヒー体験”なんです^ ^

そのような場なので、決まった進行アジェンダやレジュメはありませんが、とはいえ、「さぁ、何についてお話ししましょう?」と始めても、それはそれで困ってしまうと思うので、いくつかのキーワードや項目を箇条書きにしたペーパーを1枚用意しています

そして、そのペーパーをご覧いただいて、「これについて詳しく聞いてみたい」、「これについてちょっと質問がある」といった、お客さまの気になるポイントに沿って進めていきます

今回は、そのキーワードや項目の一端をご紹介させていただきます

1.コーヒー豆が出来るまで

コーヒーの産地について(エリア、気候、土壌など、自然環境が豆の風味に与える影響)/コーヒーの品種について(アラビカ種、カネフォラ種[一般にロブスタ種と呼ばれるもの]の特徴)/生育から収穫、精製(果肉除去、発酵、乾燥、脱殻など)/輸出入を経て、店に生豆が届くまで

2.焙煎(ロースト)について

焙煎とは/焙煎の流れ/焙煎による豆の変化/焙煎の勘所

実際に焙煎機の脇までお越しいただき、原料としての生豆をご覧いただいたり、焙煎機の構造(生豆の投入口、豆を煎る窯、焙煎後の冷却装置など)をご案内します。また、煙突から排煙される前に集塵機で除去するチャフ(焙煎中に豆の表面から剥がれる薄皮)などもご覧いただきます

3.淹れ方(抽出)に関する考え方

豆が持つ風味の特徴や、雑味の感じ方によって、おすすめする淹れ方は変わること。雑味がないクリーンな豆を使うと、淹れ方に加減は不要でしっかり抽出することだけに集中できること。そのため、通り一辺倒の「これが美味しい淹れ方です」といった進め方とは異なります

4.3種類のコーヒー飲み比べ

フレンチプレスで淹れた、まろやか系、しっかり系、華やか系3種類のコーヒーを飲み比べていただきます。「なぜこんなに風味が異なるのか」を紐解くのも楽しい時間です。また、チョコをひとかじりしながら、フードペアリングについてもお話しします

以上はほんの一端ですが、先にも述べた通り、これも1から順に授業のように進めるわけではありません

あくまでもこれらのキーワードはおはなしのきっかけでしかないので、それらをもとに順不同で、あーでもない、こーでもないと、お客さまと楽しくおはなしできればサイコーです!

ちなみにこの“コーヒー体験”を始めて2年以上になりますが、すでに本当に多くのお客さまにご体験いただきました

そしてご体験いただいたお客さまが、その後も店にお越しくださり、「あの体験以来、コーヒーが更に身近な存在になりました」とか、「異なる風味に触れると、産地のことまで思い描くようになって、毎日のコーヒーがなんだか楽しくなりました」と皆さんワクワクしながらお話をしてくれるので、その度にこちらも嬉しくなっちゃいます

僕自身、この時間がとても好きです

普段の営業中ではなかなかゆっくりお話しできないこともありますが、この時間はコーヒーを囲みながら、お客さまの疑問や興味にじっくり耳を傾けることができます。そして僕自身も、毎回新しい発見をいただいています

というわけでご興味を持たれた方は、ぜひ、いろどりこーひーの“コーヒー体験”をご体験ください(^^) /

(場所の制約から参加人数は2〜4名程度でお願いしています。お時間は90分程度。もちろん無料です)

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします

   バックナンバーは、コチラ

2026年6月16日火曜日

No.278_グァテマラ🇬🇹リベルタッドのご紹介



ベリー&オレンジのやさしい甘み

華やか、豊かでエレガントな余韻

そんな魅力を持つコーヒーが、今回ご紹介する「グァテマラ リベルタッド」です

“リベルタッド(La Libertad)”は地名で、そこは中米グァテマラの北西部、メキシコと国境を接するウエウエテナンゴ(Huehuetenango)地方に位置する、標高1,600〜1,700mもある急峻な山岳地帯です

高標高な産地は、昼夜の寒暖差が大きいので、それだけでユニークな風味を育む要素になりますが、この地域はさらに、

①山岳地帯特有の、水はけが良く肥沃な土壌

②乾季が明瞭で収穫後の天日乾燥がしっかりできる

③メキシコ国境側から吹く乾いた風のおかげで、樹々が蒸れにくく、健全な栽培環境が保たれる

等、コーヒー豆の生産に最適の条件が揃ったエリアです

ところで今回お届けする銘柄は、詳しくはリベルタッド・レゼルバ(La Libertad Reserva)といいます。レゼルバはスペイン語で「特別に取り分けられたもの」「選りすぐりの上級品」という意味があります。ワインやラム酒でも使われる言葉ですが、今回のコーヒーも、その名の通り同地区の中から特に優れたロットだけが選抜されています

焙煎では、この豆のポテンシャルを最大限に引き出すよう、進捗に合わせた熱量コントロールを慎重に行い、やさしい甘みに着地するよう優しく焼き上げました

華やかな香りを持ちながらも決して派手すぎず、毎日飲んでも飽きのこない上品な味わいは、この豆の大きな魅力でもあります

どうぞ、お楽しみください

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします

   バックナンバーは、コチラ■ 

2026年6月9日火曜日

No.277_ブラジル🇧🇷カルモナチュラルのご紹介


今回は、ブラジルの「カルモナチュラル」をご紹介します

丸みのあるナッツ感の甘さ

柔らかく、長く続く心地よい余韻

カルモナチュラルは、ブラジル南部ミナス・ジェライス州(Sul de Minas Brazil)のカルモ農園(厳密にはCarmo Estate Coffeeという、そのエリアで代々コーヒー栽培を続けてきた生産者グループ)で、ナチュラル精製(果肉を付けたまま乾燥させ、その後に脱殻する方法)によって生産されました

この農園は、ブラジルの産地の中では比較的高地(標高1,100〜1,200m)の山岳地帯にあり、起伏に富んだ斜面でじっくりとコーヒーの実が育まれます

ちなみにいろどりこーひー開店以来の定番でもある、もうひとつのブラジルと比較すると、産地がさらに高地な分、昼夜の寒暖差が大きく、よりユニークな風味と上品な質感を持っています

かつては「ブラジル=大量生産(凡庸)」のイメージがありましたが、2000年以降の「スペシャルティコーヒー」への潮流の中で、カルモ農園は「量から質へ」の転換をいち早く遂げ、高品質な生産地として世界中で高い評価を得てきました

今回お届けするカルモナチュラルは、【ブラジルらしいコクのある甘さ】、と【スペシャルティらしい濁りのないクリーンさ】が両立したとても魅力的な豆です

エチオピアやケニアのような、パッと華やかな酸とは異なり、その抑えられた酸には角がなく、とても穏やか。ナッツやチョコレートを思わせるマイルドな風味は、「日常飲み(デイリーユース)」にぴったりです

そのマイルドさ故、バターをつけたトーストや焼き菓子、スィーツにも、そして意外にも和菓子との相性も抜群。また、少し濃いめに淹れてミルクをたっぷり入れても、とっても美味しくいただけます

華やかなコーヒーを飲み慣れた方が、「やっぱりブラジルは落ち着くなぁ」と、ふと帰ってきたくなるような安心感!

ぜひ、日々の暮らしの真ん中でお楽しみください

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします

   バックナンバーは、コチラ■ 

2026年6月1日月曜日

No.276_生豆の中の水分を使って水分を抜く


今回のテーマは「生豆の中の水分を使って水分を抜く」。まったく意味不明なテーマですね(苦笑)

実はこれ、焙煎前半のキモともいえる、僕としてはとても大切にしている考え方なんです

ところで焙煎前の生豆にはおおよそ10〜12%の水分が含まれています(これは豆種によって若干異なります)。そして焙煎によってその多くが蒸発し、焙煎豆では2〜3%程度になります

焙煎は単に豆を焦がしているのではなく、まず豆の中の水分を適度に抜き、その後、糖や有機酸の変化を進め、風味や香りを作り出していく乾熱調理の世界です

今回のテーマからは少し余談になってしまいますが、焙煎して出来上がったコーヒー豆は、その重量が焙煎前(生豆)のおよそ85〜80%になります。このばらつきは、豆種によってその固さ、密度が異なること、焙煎度が異なることによります

そしてその減量要素の多くは、水分蒸発で、他にもチャフ(薄皮)の脱落/揮発性有機化合物の放出/CO₂などガスの発生が関与しています

さて、話を『どうやって水分を抜くか』という本筋に戻します

僕は、生豆投入後から窯内温度160℃前後までを、水分抜きフェーズとして捉えています

ある定めた窯内温度で生豆を投入すると、窯内温度は一気に下がります。やがてその温度下降は平衡状態に達し、窯内温度は一旦底をつき、今度は上昇に転じます。この時の底の温度(最低温度)を“ボトム”と呼んでいます。別の言い方では、“中点(ちゅうてん)”と呼ぶこともあります

英単語のbottomは、「底、一番下の部分」を意味しますが、焙煎においても同じ意味合いで使用します

この状況を身近な例で説明すると、例えば乾麺を茹でるとき。湯がグツグツ沸騰した状態で乾麺を入れると、湯面はさっと穏やかになり、数十秒後、再び沸騰し始めます。この間、湯温は乾麺投入直後にグッと下がり、やがて底をついた後、再び上昇に転じますが、この時の底の温度が“ボトム”です

焙煎ではこの“ボトム”を年中、どの豆種も同じになるよう(ある温度±1℃に収まるよう)に、管理しています

ちなみに店内に保管されている生豆は夏はぬるい状態で、冬は冷え冷えとしています。この温度の異なる生豆を投入して、そのボトムを年中揃えるということは、夏冬で、投入のタイミング(温度)を10℃以上も変えて調整していく必要があります。冬は夏より、10数℃高めの温度で投入するのです。この『季節に合わせた微調整』が、年中変わらない“いつもの味”をお届けするためのポイントの一つです

水分抜きで一番大切なのは、「豆の表層も芯部も均質に水分が抜かれていくこと」です

仮に表層だけカリッと抜けて、芯部に多めの水分が残っていると、後のデベロップフェーズで適正な化学変化は起きません。極端な場合はエグ味さえ発生させますし、そこまでいかなくとも、「明るさが足りない」とか、「重さを感じる」といったネガティブな風味につながってしまいます

一方で水分率ゼロに近付き過ぎると、抽象的な表現ですが「風味が抜けた」と言うような、味気ないコーヒー豆が出来上がってしまいます

均質な水分抜きを達成するには、「どういう温度で、どういう時間をかけるか」がとても重要です

それを適正に行うと、10〜12%の水分を含んだ生豆は、先ずは全体がジワーッと温まりだし、表層から少しずつ水分が抜け始めます。次に芯部の水分は、表層側の少し乾き始めた部分へ移動しながら抜けていきます(これを「水分勾配による拡散現象」といいます)

仮に火力が強過ぎると(または前述のボトムが高止まりすると)、豆の表層が早々にカリッと乾燥して、その部分の熱伝導率が下がるため、そこが断熱層のような働きをして、芯部に熱が伝わりにくくなります。その結果、芯部の水分抜けが悪くなり、前述のネガティブ風味をもたらすことになります

このように豆表層の水分を利用しながら、芯部の水分も適正に抜いていくという意味で、本日のテーマが「生豆の中の水分を使って水分を抜く」となったわけです^^

焙煎中、豆の温度上昇速度(RoR: Rate of Rise)を細かく管理するのは、まさにこの「刻々と変化する豆の水分量と熱伝導率」をコントロールするためです

この水分抜きが上手くいくと、雑味のない、透明感のある、クリーンな味わいの豆が出来上がります。焙煎前半は地味な工程ですが、実は一杯のコーヒーの印象を大きく左右する大切な時間なのです

 

いろどりこーひーは珈琲豆を通して、皆様の心豊かな暮らしに“彩り”をお届けします

   バックナンバーは、コチラ■