2026年8月25日火曜日

No.288_焙煎の煎り止めで「1℃の違い」を焼き分けるということ


1回の焙煎は、生豆を窯に入れてから20分ほどで終了します。その終了のタイミング、つまり焙煎機から豆を出す瞬間を「煎り止め」といいます。そして、そのときの窯の中の温度を「煎り止め温度」、または「ロースティングポイント」と呼びます

いろどりこーひーでは、この「煎り止め温度」を豆種に応じて1℃単位で細かく定めています。一番浅い煎り加減のものと、一番深いものでは、10数℃の違いがあります

そして、この「煎り止め温度」を決定する一番の根拠は、出来上がった豆の「味」です

焙煎後は、「カッピング」と呼ばれる味のチェックを行います。特に初めて扱う豆の場合は、あえて煎り止め温度を1℃変えた豆を焼き分けて準備し、風味をじっくり比較します。「どちらの方が、よりその豆の魅力を引き出せているか?」。それを何度も確認しながら、その豆にとってベストな煎り止め温度を定めていきます

いろどりこーひーの焙煎では、煎り止め温度1℃の差は、時間にするとおよそ5〜6秒の違いです

「たった5〜6秒!?」

「その程度の差は誤差の範囲じゃないの?」

もしかしたら、そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこのわずかな差が、風味の明るさ、コク、クリアーさ、質感、そして余韻の心地よさにまで、繊細に影響してくるのです

だからこそ、煎り止めで1℃の違いを焼き分けるには、「風味の再現性」と「味覚」、この両輪が揃わなくてはなりません

仮に「あと1℃だけ高く煎った豆と比較したい」と思っても、それ以前の焙煎プロセスにブレがあったのでは正確な比較はできません。その手前の段階で、すでに味の違いが生まれているからです

美味しいコーヒーをお届けするため、開店以来、この2つのスキルを磨き続けてきました

そんな過程で見出した一つの事象を、ここでご紹介します

結論から申し上げると、「煎り止め温度は、夏よりも冬のほうが1℃高く設定することがある」ということです

窯から取り出された豆はすぐに冷却装置へ移され、強力な送風と撹拌によって一気に冷やされます。煎り直後の豆は200℃を超える高温のため、窯から出た瞬間に変化がぴたっと止まるわけではありません。冷却中も豆の内部には熱が残っており、1〜2分ほどかけてじわじわと成分の変化が収束していきます

この冷却は、室内の空気を吸い込むことで行います。 そのため、冷却に使う空気の温度は「その日の室温」そのもの。夏は30℃前後ですが、冬は10℃前後まで下がります。この約20℃の差によって、夏はややゆっくり、冬は冷気によってさっと冷やされます

冬場はさっと冷やされる分、余熱による味の変化が早く止まります。そのため、最終的な風味を夏と同じ最高の状態に着地させるべく、冬場はあえて煎り止め温度を1℃高く設定することがあるのです

……いやはや、途中から、かなりマニアックな世界に入り込んでしまいました(苦笑)

ですが、このような細かなところまでアンテナを張り、季節や豆の状態に合わせて微調整を重ねていくこと。その地道な積み重ねこそが、お客さまにいつでも「変わらぬ美味しさ」や「さらなる美味しさ」をお届けすることにつながると信じています

今日も1℃と数秒に向き合いながら、心を込めて豆を焙煎しています

 

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2026年8月18日火曜日

No.287_美味しさはどこで生まれる?


今回のテーマは、「美味しさはどこで生まれる?」です 

いろどりこーひーでは、世界のコーヒー産地から輸入された生豆を、店内の焙煎機で焙煎し、それを販売しています

そして、その過程ではいつも「美味しい豆を作ろう」との思いで、取り組んでいます

「美味しい豆」を作るには、素材(生豆)と焙煎の両方が大切です

【良い素材】×【良い焙煎】➡︎【美味しい豆】というのが、僕の基本的な考え方です

すると、今回のテーマ「美味しさはどこで生まれる?」の答えは、「いろどりこーひーで!」でしょうか?

....実は、僕はそうは思っていません

もちろん、店では「これは美味しい!」と僕自身が納得できるものだけを、お届けしています。それには先ず素材を厳選し、焙煎も毎回ブレがないよう再現性を大切にしながら、その上で更なる美味しさを目指して、日々探究を続けています

しかし、これはあくまでも、作り手である「僕が思う美味しさ」...なんですね

その豆はやがてお客さまのもとへ行き、ご自宅や職場で淹れられ、飲まれることになります

そこでコーヒーを口にされた方が、「あぁ、美味しい!」と感じてくださった瞬間に、「真の美味しさ」が生まれるのだと思っています

ここで、ちょっと突飛な例えですが...

あるミュージシャンが作詞作曲し、歌い、それをレコーディングしてサイコーの曲が出来上がったとしても、それはまだミュージシャン自身が「そう思っている」段階です。やがてその曲がリリースされ、聴いた人が感動したり、大好きになったり、ハッピーになったり...そうしてその曲は、その人にとってのサイコーになり、同時にミュージシャンにとっての真のサイコーになるのだと思うのです

コーヒーに話を戻すと、

もう一つ大切なのは、「美味しい」は人によって違う、ということです。僕が「この豆は、こんなところが美味しい」と感じてお伝えしても、お客さまが同じように感じるとは限りません

酸味が好きな方もいらっしゃれば、苦味が好きな方もいらっしゃる。軽やかな味わいが好きな方もいらっしゃれば、深くコクのある味わいを好む方もいらっしゃいます

そのため、いろどりこーひーでは、風味にもバリエーションを持たせたラインナップとしています

そこで辿り着いたのが、コーヒーも、

「美味しさはお客さまのもとで生まれる」

これが今回のテーマに関する僕自身が至った答えです

これからも、お客さまご自身の空間、シチュエーションで「あぁ、美味しい」と感じていただける一杯をお届けできるよう、お客さまとの対話を大切に、焙煎と向き合っていきたいと思います

 

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2026年8月11日火曜日

No.286_クラフトとしての焙煎



“クラフト”という言葉...僕はそれに、どこか惹かれます

クラフト(Craft)という単語を調べてみると「手作り、手工芸」といった説明のほか、広義には「技能、技巧、技術、職人技」といった意味もありました

そしてクラフトと呼ばれる製品には、革製品や陶器、木工品などのように丹念に手作りされたものや、クラフトビール、クラフトチョコレートのように、作り手が素材選びから工程までこだわり抜いて生み出すものがあります

僕が自家焙煎コーヒー豆店を始めた理由はいくつかありますが、単に「モノを仕入れて売る」のではなく、「“焙煎”という一手間を加えてお届けする」というクラフト感に魅力を感じたから...というのも、一つの、そして大きな理由です

“一手間”といっても、実際は素材の厳選に始まり、豆の種類や季節、その日の気温、湿度に応じた微小な火力、排気、時間コントロールなど、調整や工夫するポイントは多岐にわたります

一方で、それらの作業がスムーズにできればそれでよし!と、いうものでもありません

というのも、コーヒー豆屋にとっては、その先にある出来上がった豆の“味”がすべてだからです

いわば“味覚商売”という、一筋縄ではいかない奥の深い世界に挑むことも、これまた僕の意欲を掻き立ててくれます

一手間を加えるというのは、言ってみれば、僕自身を豆に重ねること。それが僕にとっての“クラフト”なのかもしれません

そういう意味では、僕の仕事は焙煎して終わりではありませんし、さらにはお客さまに販売して終わりとも思っていません

その豆をお求めいただいたお客さまが、ご自宅で、あるいは職場で、コーヒーを淹れて楽しんでくださる

僕の仕事は、そんな豊かな時間へとつながる「前段の一部」なのだと思っています

僕の手で心を込めて“クラフト”した豆が、お客さまの暮らしの一シーンで、どうかお役に立てますように...

そんな思いが、僕を日々焙煎に向かわせるモチベーションになっています

 

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2026年8月3日月曜日

No.285_タンザニア🇹🇿 ンゴロンゴロ(Ngorongoro)/コンゴニ農園のご紹介


今回はタンザニア北部、世界自然遺産として知られるンゴロンゴロ(Ngorongoro)保護区に隣接するコンゴニ農園(Kongoni Estate)の豆をご紹介します

この近くにはサファリで有名なセレンゲティ国立公園も広がり、ライオンやゾウ、キリン、シマウマなど、多くの野生動物が暮らす、アフリカを代表する大自然に囲まれています

そんな雄大な自然の中、標高およそ1,600〜1,800mの高地で育てられたのが、このコンゴニ農園のコーヒーです。コンゴニ農園のコーヒー栽培面積は220haにもおよび、タンザニアでも歴史があり、品質の安定性が高く評価されている単一農園です

昼はしっかり日差しを受け、夜はぐっと冷え込む大きな寒暖差

火山由来の肥沃な土壌、そして豊かな自然環境

この地には、コーヒーがゆっくりと熟すための条件がそろっています

こうして生育したコーヒーの果実は(その種子も)、糖分や風味をしっかりと蓄えていくのです

この豊かな素質を損なわないよう丁寧に焙煎し、カッピングして最初に感じたのは、

 《 甘さに包まれた、まろやかな口当たり 》

そして、その後すぐ広がる

 《 ベリーを思わせるマイルドな柑橘感 》

タンザニアといえば、かつてのキリマンジャロのイメージから「力強い酸味」を思い浮かべる方も多いかもしれません

しかし、このコンゴニ農園の豆は、華やかさを競うというより、甘さと調和した穏やかさが持ち味で、程よいコクと透明感も相まって、飲み進めるほどに心地よさが増していく、そんなコーヒーです

豊かな自然に育まれたコーヒーらしく、どこかゆったりとした表情が楽しめます

 

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・・・・・・以下は、余談です・・・・・・

 

セレンゲティとンゴロンゴロの地理、地勢に興味が湧いたものですから、少し調べてみました...

1.セレンゲティ国立公園(1951年国立公園設立、1981年ユネスコ世界自然遺産登録)

タンザニアの北部に位置し、北の隣国ケニアのマサイマラ国立保護区へと続く広大なサバンナ(東京都の約7倍)

エリアには約150万頭のヌー、それぞれ約30万頭のシマウマやガゼル、約7,000頭のゾウ、約4,000頭のライオン、約1,000頭のヒョウ、約200頭のチーター、約3,500頭のハイエナ等が生息

2.ンゴロンゴロ自然保護区

セレンゲティ国立公園の東側に隣接するエリアで野生動物とマサイ族が共存することから1959年自然保護区として設立

このエリアは約250万年前、巨大火山が噴火後、山頂部が陥没して形成されたンゴロンゴロ・クレーター(直径約19km、外輪からの深さ約600m)があり、そのカルデラの底に草原、湿地、湖があり、ヌー、シマウマ、ライオン、アフリカゾウ、バッファロー、カバ、クロサイ、フラミンゴらが生息

外輪の断崖(頂部標高約2,200m)が崩れずそのまま残っているので、巨大カルデラ内で独自の生態系が保たれている

3.コンゴニ農園

ンゴロンゴロ・クレーター外輪山 外側の南東側斜面(標高1,600〜1,800m)に位置する

全体敷地約1,600ha、コーヒーの木栽培エリア約220ha、開墾から100年を経ている伝統的な単一農園(高品質エステート)

南東向きの斜面を生かした栽培が行われている。そこは午後の強い西日を受けにくく、且つ南西側の原生林をシェードツリーとして保存、活用することで、コーヒーの木への日射の負担を和らげる工夫をしている