2026年9月29日火曜日

No.293_ジョギングは素晴らしいなぁ〜


日頃、運動不足な僕は、店休の日、なるべくジョギングに出かけるようにしています

「ジョギングに出かける」なんて、まるで「ハイキングに出かける」みたいな妙な表現ですが、それは「ジョギングしてます」よりは、ずっとゆるい感じなものですから...(苦笑)

ちなみに普段、営業日の僕は、たぶん一日数百歩しか歩いていないんじゃないか...という具合です

店を始める前の会社勤め時代は、通勤や勤務中の外回りなどで、一日1万歩くらいは普通に歩いていたと思います...それが、今や数百歩ですから、かなりのギャップです

とはいえ、毎朝の焙煎は体調がイマイチな状態では務まりません。また、お客さまとの応対も元気、活力がなくちゃ務まりません(体調イマイチで、お客さまをお迎えするわけにはいきません)

そのためにも「ジョギングに出かけています」(お腹もあまり出たくないですし...苦笑)

不定期に“走る”ということを始めたのは、30代だったように思いますが、ジムの会員になって、定期的に走る(トレッドミルですが)ようになったのは、40代になってからのことです

この「定期的にやってみよう」と思い立った動機ですが、当時、村上春樹さんの著書「走ることについて語るときに僕の語ること」を読んだことも、そのきっかけの一つです

最初、題名が目にとまり、「ん?語るときに語ること?」、「ん?何を語ってるの?」と、手に取りましたが、いざ読んでみるとそれはいわゆるランニング ハウツー本ではなくて、僕には、村上さん自身の人生のあり方や、走ることから育まれていった考え方(それは村上さんの“哲学”と呼んでもいいかもしれません)が、描かれていると感じられました

毎日続けること/人と比べず、自分のペースを守ること/身体と向き合うこと/そして、年齢を重ねていくことも含めて、自分なりの道を淡々と続けていくこと(派手な成功より、静かな継続を選ぶこと)...

それらは全て日々のランニングや、フルマラソンなどの経験を通して、養われていったのだと知りました

当時、それを読み終えた僕は、一言「かっこいい!」、みたいな感覚を持ったものです。そのミーハーとも言える感覚から、「自分も“走る”を継続してみようかな」につながっていったのです

今、僕が(ゆるい)ジョギングで得ているものは、健康面の恩恵はもちろんですが、それ以上に「精神的なリフレッシュ」の面での恩恵が大きいように感じています

例えばひと昔前、早歩きと変わらないスピードで走っているおじいちゃんやおばあちゃんを見かけると「あらまぁ...」なんて思ったものですが、今は全く違います。「素晴らしいなぁ!!」です!

僕をサッと抜いていく若者の背中にも「素晴らしいなぁ!!」、ご夫婦やカップルで明るく会話しながら走っている姿にも「素晴らしいなぁ!!」

思い思いの目的を持って走っているすべての人たちに、ちらりと目線を向けては「素晴らしいなぁ!!」と心の中で呟いています。たぶん、1回のジョギングで30回、40回は「素晴らしいなぁ!!」を連発しているのではないでしょうか...😅

そして、走りながらそんなことを感じている自分にも「素晴らしいなぁ!!」と声をかけながら、毎週のゆるいジョギングを楽しんでいます

そう!「ジョギングは素晴らしいなぁ〜」です^ ^

 

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P.S.

葛西(環七の東の終点のようなところ)に住んでいる僕には、2方向のお気に入りのランニングコースがあります

一つは葛西臨海公園を東端から西端まで走り抜けた後、荒川沿いのランニングコースを北上し、清砂大橋通りで折り返してくるコース(今回の写真はその荒川沿いのランニングコースで、撮影したものです)

もう一つは、環七終点から東へ舞浜大橋(旧江戸川)を渡って、お隣の千葉県舞浜へ向かうコース。そこから東京ディズニーリゾートの外側をぐるりと回ってきます。こちらも海沿いに綺麗なコースがあり、東京湾に浮かぶ船や、羽田空港を離着陸する飛行機を眺めながら走ることができるお気に入りのコースです(こちらは“つぶやきNo.253”にその写真を掲載しています)

No.292_コーヒーの風味表現における“ラウンド感”



前回の店主のつぶやき『No.291_味は半分、見た目半分、そして引き算の思想』の中で、「心地よいラウンド感」という言葉を使ったところ、それを読んでくださったある常連さんがご来店された際、「なるほどねぇ」とお話してくださいました。一方で、別の常連さんからは「ラウンド感とか、丸みって聞いても、イマイチピンと来ないですねぇ...」というお声も

それを伺って、まず何より「このつぶやきを読んでくださっているんだ!」と嬉しくなりました。また、書いて終わりではなく、こうしてお客さまと言葉を交わすきっかけになることは、毎週書き続けていく上で、何よりの励みになります。ありがとうございます

ところでこの“ラウンド感”という言葉。実はお店でお客さまにコーヒーを説明するときに、一度も使ったことがありません

スペシャルティコーヒーの世界では、香りや風味、酸味、甘さ、口当たり(マウスフィール)などを、フルーティー、フローラル、ジューシー、シルキー、スムース…といった様々なカタカナ言葉で細かく表現します

もちろんそれも大切な評価基準なのですが、僕自身は説明を受ける立場になったとき、そうした言葉やチャートを見せられても、具体的にどんな味わいなのかイメージしにくいと感じてしまうのです。だからこそお店では、できるだけ日常の言葉でお伝えするようにしています

ですので、今回タイトルに『コーヒーの風味表現における“ラウンド感”』と掲げてはみたものの、ことさらそれを事細かく力説したいわけでもありません。ただ、僕がコーヒーを焙煎し、味を創る上で、とても大切にしている感覚なものですから、その思いを少しだけご紹介させていただこうかと思います

まず、僕が考える“ラウンド感”が生まれるには、“良い生豆”と“良い焙煎”が掛け合わされる必要があると思っています(そのどちらかが欠けたり、至らなければ、実現しないということです)

ここで言う“良い生豆”とは、必ずしも“高価な豆”という意味ではありません。その土地の風土を生かしながら丁寧に栽培され、熟度を見極めて収穫され、適切な方法で精製・乾燥されたクリーンな素材。それが僕の考える「良い生豆」の条件です

そして“良い焙煎”とは、焙煎中の各フェーズで適正に熱を伝え、豆が持つ成分に必要な化学変化を過不足なく起こしていくこと。そうすることで、豆本来の甘さや香り、酸味、質感がバランスよく引き出されます

その結果として生まれるのが、僕の思う“ラウンド感”です

敢えて言葉で補足するなら、『豆が持つ個性的な酸が角立つことなく、心地よい甘さに包まれ、口の中で丸みをもって柔らかく広がり、静かな余韻へと繋がっていく感覚』でしょうか

これはシングルオリジンはもちろん、ブレンドの配合を決めるときにもとても重視している感覚です

舌の一点だけに突出した味が感じられるのではなく、さまざまな要素が調和しながらふんわりと広がり、飲み込んだ後も、心地よい余韻が残り続ける。そんなイメージです

えっ?ますます意味不明になってしまいましたか?(苦笑)

だからこそ、僕としては難しい説明を並べるよりも、お客さまがいろどりこーひーのコーヒーを口にしたときに、

「なんだか美味しいな」 、「なんだか飲みやすいな」 、「なんだか、また飲みたくなるな」

そんな風に、無意識のうちに感じていただけるのが一番だと思っています

結論としては、どうぞ“ラウンド感”なんて専門用語は気になさらず、日常の暮らしの中で「なんだか美味しい」を思い思いにお楽しみ頂ければと思っています

みなさまの毎日にそんな小さな心地よさが届くことが、僕にとっての、何よりの喜びです

 

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2026年9月15日火曜日

No.291_「味は半分、見た目半分」そして、引き算の思想


NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』は、僕が好きな番組の一つです

ただ、リアルタイムで観られないことも多いので、録画しておいて、気の向いた時にゆっくり観るようにしています。そんなこともあって、放送から数ヶ月経っていますが、少し前に『人生ラーメン、遠回りのスープ』という回を観ました

その番組の主役(プロフェッショナル)は、香川県のラーメン店主、森敏彰さんです

一言で言えば、「美味しいラーメンをお手頃な価格で提供し、今では地元の常連さんが行列を作るラーメン店の店主」となるのでしょうが、そこに至るまでのプロセスや葛藤、そして、今なぜ多くのお客さまに支持されているのか...そんなことまで垣間見える、とても興味深い内容でした

中でも特に印象に残ったのが、森さんが語っていた、「味は半分、見た目半分」という言葉です

森さんの言う「見た目半分」というのは、単に料理の盛り付けのことではありません。店主である森さん自身の笑顔あふれる接客、店の雰囲気、清潔感、それら全てを含めた“店を包み込む空気感”を『見た目』と称し、それが店に入った瞬間から感じる心地よさにつながっているのだと感じました

一方の「味は半分」も、決して味を軽視しているわけではありません。美味しいものを作り続けることに全身全霊を尽くした上で、「それだけではまだ足りない。同じくらい“店を包み込む空気感”も大切なんだ」と伝えているように僕には聞こえました

実は僕も、日頃からこれに近い思いで「いろどりこーひー」に取り組んでいます。自分が大切にしてきた漠然とした思いを、森さんが見事に言語化してくれたような感覚でした

そしてもう一つ、

美味しい究極のスープを作るために森さんが辿り着いた『引き算の思想』です

美味しいものを作ろうとすると、ついつい何かを「足そう」と考えてしまいがちです。森さんもかつては、高級な食材や珍しい素材を次々と足していく方法を取っていました。しかし、「それでは素材同士が喧嘩してしまい、本当に表現したい“飽きない美味しさ”には届かない」と気づいたことが、『引き算の思想』へ転換するきっかけとなったとのことでした

そして、かえし(タレ)の主張を極限まで抑え、ラードや香味油を極力減らし、口当たりをどこまでも軽くする。鶏ガラや豚骨、魚介などの厳選した素材を、濁らせないよう弱火でじっくりと煮込む。さらにアクや雑味を徹底的に取り除いて、「これ以上何も引けない」という純度の高いスープに仕上げていくのだそうです

この足し算しない、少しのブレも許されない非常に難易度の高い製法にたどり着いたことで、「水のように体に染み渡りながら、喉を通った後に素材の圧倒的なコクと余韻が残る」という、森さんならではのラーメンが完成しました。そしてお客さまからは、“琥珀色のスープ”の愛称で親しまれ、朝ラー(朝6時から8時まで提供される、一杯500円のラーメン)は、地元の常連さんが、『朝一番の澄んだ空気の中で、極上のスープをすすって、1日をスタートさせる!』そんな食文化として根付き始めているとのことでした

この『引き算の思想』は、いろどりこーひーでのブレンド作りや焙煎にも深く通じるものがあります

例えば『ゲデブナチュラルが持つ、際立つストーンフルーツ感を生かしたブレンドを作りたい』と考えた時、必ずしもゲデブナチュラルをたっぷり使うことで、魅力的なブレンドが出来るとは限りません。むしろその良さは『長く心地よく続く余韻を繊細に担ってもらう』そんな合わせ方が僕は好みです

また、個性(風味キャラ)が際立つ2種類のシングルをブレンドする際も注意が必要です。まさに森さんの言葉にもあった『素材同士が喧嘩する』の現象が起きがちだからです。ブレンド作りで何よりも重視することは、バランスです。これが取れているとき『心地よいラウンド感』と表現される、丸みのある魅力的なブレンドが出来上がります

焙煎もブレンド作りも、「何かを足して美味しくする」というより、「豆が本来持っている良さを引き出すため、邪魔するものを削ぎ落とす」、「本当に大切な味わいを際立たせるために、余計なものを丁寧に取り除いていく」、根底にあるのはまさに森さんがおっしゃる『引き算の思想』です

今回は、テレビ番組から得たインスピレーションのおはなしでしたが、本を通して得られることもありますし、いろいろな場面、いろいろな人との出会いの中に、仕事、生き方について考えるきっかけはあるものです

そして僕にとっては、何よりも、お客さまとの対話の中でいただくインスピレーションが大切です。何気ない一言に、気づかされること、勇気づけられることが日々あります

そんな小さな気づきを一つずつ積み重ねながら、これからも、いろどりこーひーらしいコーヒー豆を作っていきたいと思っています

 

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2026年9月8日火曜日

No.290_ブラジル🇧🇷イパネマ農園/イエローブルボン・ナチュラルのご紹介


今回は、“ブラジル🇧🇷イパネマ農園/イエローブルボン・ナチュラル”をご紹介します

 ネクタリンを思わせる、まろやかな口当たり

 その甘さに包まれながら重なる、ラズベリーの風味

昨年も発売し、大変ご好評いただいたブラジル/イパネマ農園(Fazenda Rio Verde/Ipanema Coffees)の豆を今年もお届けできることになりました

昨年は“C6区画ストーンフルーツ/アナエロビックナチュラル”をお届けし、「ブラジルコーヒーの概念が変わった!」と、多くのお客さまから嬉しい反響をいただきました

そして今年、同じイパネマ農園から届いたのは、また一味違うスペシャルなロット、“ B42区画ラズベリー ” です

輸入された生豆の箱側面にある説明(英字)によると、イパネマ農園では以下のような素晴らしい取り組みが行われています

『イパネマ農園が擁する71のテロワール(栽培区画・合計600ha超)の中から、標高1,000m以上の34区画を選定し、最高峰ラインである“プルミエ・クリュ(Premier Cru)”として製品化。革新的な精製施設において多様な収穫・加工手法を駆使し、それぞれ異なる風味特性を持つユニークなマイクロロット(小規模区画ごとの限定生産品)を生み出している』

この“プルミエ・クリュ”では、より魅力的で個性的な風味を生み出すため、区画ごとに目指す風味テーマを設定し、品種選定から生育、収穫、精製に至るまで徹底的に趣向を凝らしています(昨年ご案内したC6区画も、今回のB42区画も、この“プルミエ・クリュ”です)

そして今回お届けするB42区画の風味テーマは、「Raspberry(ラズベリー)」です

「ラズベリー!」と聞くと、もしかしたらキュッとした鋭い酸味や、ベリー特有の主張の強い風味が思い浮かぶかもしれません

ですが、このB42区画は一味違います。 ラズベリーが前面に飛び出してくるというよりは、ネクタリンを思わせる丸みのある口当たりと豊潤な甘さの中に、上品なラズベリーの風味が優しく重なって感じられる...そんな味わいです

それぞれの要素が主張しすぎることなく、まるで美しく調和したハーモニーを奏でているような、“静かで奥ゆかしい魅力”を持っています

今回のB42区画の品種は「イエローブルボン(Yellow Bourbon)」です

 コーヒーの実は通称“コーヒーチェリー”と呼ばれるように、一般的には赤く熟しますが、イエローブルボンはその名の通り、濃く鮮やかな黄色に熟します。蜜のような濃厚な甘さと、なめらかな口当たりがその特徴です

また、果肉をつけたまま天日乾燥させる「ナチュラル精製」を採用していることも、この“フルーティーでまろやかな風味”を引き立てる大きな要素となっています

昨年お届けしたC6区画は、精製方法がアナエロビックナチュラルで、その嫌気性発酵による複雑で華やかな果実感が印象的でしたが、今回のB42区画は、「イエローブルボン(素材)×ナチュラル(精製方法)」という素材そのものの質の高さと素直な甘みが、その魅力をしっかりと支えているように感じます

C6区画では『果実の“コク”を味わう』といった表現をしましたが、今回お届けするB42区画をそれに準えると『果実の“ハーモニー”を味わう』...そんな印象です

イパネマ農園シリーズ第二弾、そしていろどりこーひーとしても初となる「イエローブルボン・ナチュラル」。昨年のC6区画とはまた異なる、イパネマ農園の“静かで奥ゆかしい魅力”がたっぷり詰まっています

どうぞ、お楽しみください

 

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もしよろしければ、過去の店主のつぶやき『No.238_ブラジルイパネマ農園アナエロビックナチュラル』もご参照ください

イパネマ農園で行われている最先端の取り組み(ドローン、GPS、AIテクノロジーを駆使した生育、生産管理)の一端をご紹介しています^ ^

2026年9月1日火曜日

No.289_コーヒー産地“🇸🇻エルサルバドル”


この“店主のつぶやき”では、「コーヒー産地シリーズ」として、コロンビア、エチオピア、インドネシア、ブラジルをご紹介してきましたが、今回は中米の“小さなコーヒー王国” エルサルバドルがテーマです

まずエルサルバドルという国ですが、中米に位置し、国土は日本の四国より少し大きいくらいの、中米の中で最も小さな国です。地理的な特徴としては、中米諸国の中で唯一、太平洋側だけに面しており(カリブ海に面していない)、国土には数多くの火山が連なる、世界有数の“火山国”でもあります

太平洋からの温かく湿った空気が山地にぶつかることで、コーヒー栽培に適した雨や霧をもたらし、標高の高い地域では適度な寒暖差も生まれます。加えて、火山性のミネラル豊富な土壌も相まって、素晴らしいコーヒーを育む舞台が整っています

コーヒーの歴史という観点から見ると、エルサルバドルには少しドラマチックな背景があります

エルサルバドルでコーヒーの商業的な生産・輸出が本格化したのは1850年代のこと。その後、1970年代には、世界第3位の生産国、第4位の輸出国へと成長し、「小さなコーヒー王国」とまで呼ばれるようになりました

しかし、1979年から13年間に及んだ激烈な内戦により農地は荒廃し、その生産量は激減してしまいます。さらに2012年から2013年に掛けて蔓延した“コーヒー葉サビ病”(葉にさび色の斑点が広がり、光合成能力を低下させて樹勢や収量に大きな影響を与える伝染病)の影響もあり、生産量はピーク時の10分の1にまで落ち込みました

また、近年も移民流出による深刻な労働者不足、肥料や資材の高騰、エルニーニョ現象による気候変動などが重なり、かつてのような生産量復活への道のりは険しく、現在の生産規模は世界20位前後にとどまっています

大きな痛手を残した内戦ですが、実はコーヒーの「品種」においては、思いがけない奇跡を生むことにもなりました

エルサルバドルの主要な品種のブルボン種はアラビカ種を代表する伝統的な品種で、風味は非常に魅力的なものの、耐病性、耐候性が低いという弱点を持っています。そのため、(エルサルバドルが内戦下にあった)1980年代以降、世界の他の産地では、その弱点を克服するための品種改良(病気に強く、樹高が低くて収穫しやすい高収量品種の開発)が盛んに行われていきました

そうして純粋なブルボン種がどんどん失われていきましたが、時代の混乱の中でその波に乗らなかったエルサルバドルには、今も貴重なブルボン種が多く残っています。さらに、ブルボン種の自然突然変異種パカス種が生まれたのもエルサルバドルです

そしてそのパカス種(Pacas)とマラゴジッペ種(Maragogipe、ブラジルで発見されたティピカ種の自然突然変異種)を人工交配して生み出された品種が、

パカス(Paca)+マラゴジッペ(Mara)=パカマラ(Pacamara)です

エルサルバドル国立コーヒー研究所(ISIC)で1958年に始まった研究は、長年の選抜と評価を経て1980年に初めてリリースされ、1990年代に世界へと広く知れ渡りました。パカマラ種は、手元で見るとびっくりするほど大粒の豆(通常の豆の約1.5倍ほど)で、トロピカルフルーツや熟した果実、花やハーブを思わせる、華やかで複雑な風味を引き出す素晴らしいポテンシャルを秘めています。

現在のエルサルバドルは「量」を追うのではなく、ブルボン種やパカマラ種といった高品質な「スペシャルティコーヒー」の生産(量より質)へと舵を切り、世界中のバイヤーから高い評価を受ける独自の地位を築いています

では、エルサルバドルのコーヒーは、どんな味わいなのでしょうか

もちろん産地、品種、精製方法などによって違いはありますが、伝統的なブルボン種の魅力を一言で表すなら、「包み込むようなやわらかな甘みと、驚くほど滑らかな口当たり」です

 チョコレートやキャラメルのような質感のある甘みに、上品で優しい酸味がバランスよく寄り添います。クセが少なく、飲み進めるほどにホッと心が和むような美味しさです

生産国の歴史や地形、品種の成り立ちに思いを馳せてみると、目の前の一杯に詰まった物語がより鮮やかに見えてくるから不思議です。 太平洋の風と火山の恵み、そして時代に翻弄されながらも伝統を守り抜いてきた人々の情熱が育んだエルサルバドルのコーヒー

ぜひ、そのやわらかな甘みと澄んだ余韻を、どうぞゆったりとお楽しみください

 

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